変化する女性たちの価値観 その変化についていけていない男性たち

笹野先生は「韓国の女性の教育水準が短時間で爆発的に上昇し、女性たちの結婚への価値観が急激に変化したこと」と「(1990年代〜2000年代前半生まれ世代の)男女比の不均衡」が背景にあると指摘している。

笹野先生によると、韓国では20代半ばから30代半ばの「娘世代」の大学進学率が「母世代」より60%も上昇している。日本を含め、ほかの国では3世代にわたって進んだ変化をわずか1世代で経験していることになるが、それは「家父長的な韓国社会で結婚し“嫁”として生きるしかなかった「母世代」が、娘には“自分のように生きてほしくない”と望み、積極的に教育に投資した結果」だと分析する。

そして、そんな「母世代」の望みもあって、「娘世代」では高学歴による自己実現につながる多くの選択肢が生まれ、結婚して家庭を持つことの優先順位が下がっているのだと言う。

一方、韓国人男性は女性たちのように急激な変化を経験していないため、女性たちの価値観の変化についていけていないと笹野先生は指摘する。

そのうえで、韓国国内で雇用が不安定化し、公務員や大企業など限られた安定枠を巡る競争に女性も参入し競争が激化したことや、兵役の負担、2000年代から進んだ女性政策と#MeToo運動後の活発な女性運動も重なり、男性たちが女性たちへ不満を募らせていると話す。

茨城大学講師の笹野美佐恵先生(家族社会学)

韓国人男性たちの婚活はベトナムでも

女性たちの価値観や考え方が変わっていくなかでも、韓国人男性たちはこれまでと同様に結婚したいと考える人が多数を占め、子どもも欲しがっている。

だが、現在の結婚適齢期にある韓国人男性は、かつて韓国社会にあった男児選好の影響で、男性の数が女性の数より多いため、結婚が難しい状況にある。そんな理由もあって、韓国での結婚を諦めて国際結婚に目を向けていると笹野先生は分析する。

JNNは7日の報道で、日本国内の現象として日本で婚活をする韓国人男性のみを取材したが、実は、日本以外にもベトナムで婚活する若い韓国人男性が増えている。また、中国人やタイ人との国際結婚も増えていると笹野先生は指摘した。

韓国統計庁の2024年の調査によると、韓国の婚姻件数で国際結婚が占める割合は10%を達成した。じつに日本の2倍にあたる数字だ。婚姻件数を伸ばし、出生率の向上につなげたい韓国政府は2005年ごろから国際結婚を支援する政策を実施している。最近だと、「国際結婚した夫婦に結婚費用を約53万円支援」と「外国人配偶者に定着支援金約30万円給付」をかかげる自治体もある。

国際結婚を支援する韓国政府と結婚離れする韓国人女性を“わがまま”だといい、海外で婚活する韓国人男性。今後も日本で婚活する韓国人男性は増えそうだ。

来日し、日本人女性とお見合いするハ・ギョンミン(35)さん