化学機械メーカー「大川原化工機」のえん罪事件をめぐり、警視庁が「捜査指揮をしていない状況だった」などとする検証結果を発表し、警視総監が謝罪しました。

きょう午前、カメラの前で謝罪会見に臨んだ警視庁のトップ=迫田裕治警視総監。

迫田裕治 警視総監
「捜査の基本を欠き、その結果、控訴審判決において、違法であるとされた捜査を行ったことを真摯に反省しております」

「大川原化工機」の社長ら3人は2020年、軍事転用できる噴霧乾燥機を中国などに不正輸出したとして逮捕・起訴されましたが、初公判直前に起訴が取り消されました。

社長とともに逮捕・起訴された相嶋静夫さん(当時72)は、勾留中に見つかった胃がんが原因で亡くなっています。

迫田裕治 警視総監
「亡くなられた会社の顧問の方、およびそのご遺族の方々には、心から哀悼の意を表しますとともに、本件捜査によって多大なご心労、ご負担をおかけしたことについて深くおわび申し上げます」

迫田警視総監はこう陳謝したあと、10秒以上、頭を下げました。

警視庁は検証チームを立ち上げ、調査を行ってきましたが、その結果もきょう公表されました。

この事件は捜査をしていた外事1課が公安部長に報告し、指揮を受ける決まりになっていました。しかし、「公安部長ら幹部への報告が形骸化し、実質的に幹部らが捜査指揮をしていない状況だった」ということです。

聞き取りに対し、当時の公安部長ら幹部はこう説明したといいます。

当時の公安部長ら
「報告を受けた記憶もないし、指示をした記憶もない」

さらに、捜査の現場指揮官だった係長らについては、「事件の検挙を第一に積極方向で捜査を進め、捜査方針に合わない消極要素に十分な注意を払わなかった」と指摘しました。

聞き取りに対し、当時の係長は…

当時の係長(警部)
「当時のことを考えれば、もっと捜査員の声に耳を傾ければよかった。深くおわびする」

また、検証チームは「現場の動きに組織がブレーキをかけられず、軌道修正を図れなかった」とも指摘しました。

これを受け、警察当局は当時の公安部の捜査幹部ら19人を一斉に処分や「処分相当」とすると発表しました。

退職した当時の外事1課長は訓戒処分相当、当時の担当管理官と係長は減給の懲戒処分相当となっていて、公安部に出向していた警察庁採用の幹部も処分されました。

警視庁は再発防止策として、公安部に捜査員からの相談や意見を受け付ける部署を新設するなどとしています。

また、最高検もきょう午後、「警視庁公安部に対し、立件に不利な証拠の確認などが不十分だった」などとする検証結果を公表しました。