世界最高峰とされるイギリスのミステリー文学賞の受賞者がこの後発表されます。今年は日本人作家2人が注目候補になっていますが、実はイギリスでは今、日本の小説が空前のブームとなっています。

記者
「黄色いカバーが真っ先に目に入ってきます。この、書店の一番目立つウインドウに柚木麻子さんの小説『BUTTER』が、ずらっと並べられています」

ロンドンの書店に並ぶのは、柚木麻子さんの小説『バター』の英訳版。

首都圏連続不審死事件の木嶋佳苗死刑囚をモチーフに、「女性嫌悪」や「ルッキズム」といった社会課題を描いた作品で、イギリスだけで40万部以上売り上げた大ベストセラーです。

この後発表されるイギリスのミステリー文学賞「ダガー賞」に、王谷晶さんの小説とともにノミネートされています。

特に、読者を惹きつけるのが…

『BUTTER』の読者
「主人公が夜中に1人でラーメンを食べに行く場面が好きです」

ふんだんに盛り込まれた「日本食」の描写です。

「安っぽいバターの乳臭さが麺やスープにからむなり、黄金の味わいになって暴力のように縄張りを広げていく」

物語に登場する「塩バターラーメン」や「バター醤油ご飯」など、レストランでは目にすることのない「庶民的な一皿」に惹かれる読者が多いといいます。

さらに…

記者
「日本文学のコーナーなんですけれども、表紙に全部『猫』が描かれている、『猫のコーナー』なんです」

「猫」が登場するような、日本のほのぼのとした日常風景や心温まる物語を描いた「ヒーリングフィクション=癒し系小説」というジャンルが人気です。

空前の日本文学ブーム。背景には何があるのでしょうか?

書店「Waterstones」 書籍部門責任者
「マンガに興味を持っていた層が日本文学にも手を伸ばし始めたことや、日本への旅行者が増えたことで、日本文化への関心が全体的に高まっているのです」

「食」や「暮らし」という日本文化への関心の高まりとともに、イギリスで盛り上がる日本文学の世界。躍進はまだまだ続きそうです。