前回の参議院選挙の街頭演説中に発生した安倍元総理の銃撃事件からまもなく3年を迎えます。この事件をきっかけに注目された単独でテロなどを行う「ローン・オフェンダー(LO)」について、警察庁は参院選に向けて警備体制のさらなる強化を図ります。

ローン・オフェンダー(LO)とは、特定のテロ組織と関わりがなく、過激化した個人が単独で不特定多数の人に危害を加える恐れのあるもので、人との関わりが希薄なためLOによる犯罪は「前兆」の把握が難しいとされています。

警察庁はこれまで、安倍元総理銃撃事件や岸田前総理への爆発物襲撃事件、さらには去年10月に衆議院選挙中に発生した自民党本部への火炎瓶投てき事件を受け、LO対策の取り組みを進めてきました。

LO対策にあたる全国の捜査員数はおととしに比べて2倍。

今年4月から警視庁ではLO対策の専従として「公安三課」が新設されたほか、全国の警察署の警備課長をLO対策の「司令塔」とするなど、緊密に連携して「前兆」を幅広く把握できる体制を強化しています。

警察庁は参院選に向けた新たな取り組みの1つとして、きょうから選挙期間中、「LO脅威情報統合センター」を設置すると明らかにしました。

このセンターは、LOに関わる前兆となる情報や選挙に関連する不審な情報について、全国の警察などを通じて集約・統合する役割を担います。

このほか、SNS上の殺害予告や武器製造に関する投稿などを収集したうえで、関係する全国の警察に情報を展開することで選挙警備を強化し、脅威の未然防止を目指すとしています。

またLO対策をめぐっては、警察庁は今月、不動産業界団体への働きかけを実施し、武器や爆発物製造の前兆となり得る▼金属加工時の異音、▼火薬製造時の異臭、▼家庭ごみに大量の薬品ビンなどの異変に気づいた際の通報を呼びかけました。

今月20日には、警視庁三田警察署の警備課長が東京・港区の不動産会社「グッドハウス」を訪問し、啓発用のチラシを手渡したうえで「住民からの情報が寄せられたら通報してほしい」と不審な情報の通報を要請しました。

さらに、自作の爆発物製造などへの対策も進めています。

警察庁は国が指定する爆発物の原料となる薬品11品目に加え、調合すれば指定した薬品になり得るとして新たに5品目を規制対象としました。

販売事業者に対しても▼販売時の本人確認や目的確認の徹底、▼不審な情報の提供などの対策を求めています。

安倍元総理の銃撃事件などの教訓を生かし、警察庁は「二度とテロ事件を起こしてはならない」と参院選に向けた取り組みを強化しています。