戦争を体験した人やその意思を継ぐ人、それぞれの思いをシリーズでつなぐ「#あなたの623」。今回は、タレントの津波信一さんです。津波さんは今年、自身の伯母で沖縄戦の語り部として活動した、元白梅学徒隊の中山きくさんの物語を舞台化しました。中山さんとのエピソードや、舞台を通して表現したい思いを聞きました。
(舞台稽古の1シーン)
▼津波信一さん(53)
「伯母さん、俺です。信一です」
▼中山きくさん役 ナツコさん
「あ、信ちゃん?」
▼津波信一さん(53)
「上がっていいですか?」
▼中山きくさん役 ナツコさん
「はいはいはい、どうぞ~!」
劇団「TEAM SPOT JUMBLE」の主宰で、タレントの津波信一さん(53)。自身の伯母で、元白梅学徒隊の中山きくさんの物語を舞台化し、稽古に励んでいます。
(舞台稽古の1シーン)
▼中山きくさん役 ナツコさん
「白梅看護隊の体験から、戦争の話を今の子どもたちにしてほしいって頼まれていてさ」
舞台「星見草」は、戦後50年になるまで戦争について語らなかった中山きくさんが、語り部として活動を始めるまでの軌跡を描いています。
▼中山きく さん(2015年取材当時86歳)
「それまではね、戦争の話はしますよ。でも自分の学徒隊だった仲間のことは話せませんでした。なんだか自分たちだけ生き残って『申し訳ない』という気持ちがあって、本当に苦しかったです」
中山さんは、沖縄戦当時、補助看護婦として負傷兵の手当に当たりました。
▼中山きく さん(2015年取材当時86歳)
「まず手術は、夕方運ばれてきて夜中するわけです。一回手術したきりで、あとは入院中に手当をしないものですから、また化膿する。大変でした。結局は『傷が痛い』『包帯を交換しろ』『おしっこがしたい』『水、水』もう一日中この中で、兵隊が叫んでいるんですよ」
伯母・中山きくさんと戦跡たどったことを契機に平和つなぐ「行動」へ

▼津波信一さん(53)
「啓さん、ここで一度手を合わせてもらいましょうね」
中山さんと戦争について話すことは、ほとんどなかったという津波さん。しかし10年前、テレビ番組の企画で中山さんと戦跡をたどったことが大きな転機になりました。
▼津波信一さん(53)
「死のうとしていたけど、一緒にいたチヨさんが『絶対に死なない』と言ったから生き残ったという話。それがすごく印象に残っている。おばさんがすぐ捕虜になってその後、メイドさんとして働きに行って家計を支えて家族を養ったって話を聞いたので、伯母さんがもしその時に亡くなっていたら、うちの親父もいなかったって親父が言っていたんですよ。ということは、僕もいない。そこから色々積極的に話すようになりましたね」
そして、中山さんからある言葉をかけられます。
▼津波信一さん(53)
「『あなたは津波家の戦争として伯母さんから聞いたことをね、ちゃんと子どもたちや孫たちに伝えていきなさい』と言われましたね。何だろう、恥ずかしさでいっぱいというか、沖縄の人なのにというか、色んな感情が湧いた。僕らが本当はやるべきじゃないかっていう」
今年3月、津波さんは、舞台の出演者らと中山さんが辿った戦跡を再び訪れました。そこには、息子・俊之介さんの姿もありました。
▼津波信一さん(53)
「しっかりと歩きながら色んな話もできたし、息子も感じるものがあったと思いますよ。次、どういう行動するか分かりませんけれども」
▼津波信一さん(53)
「やっぱり戦争が悪いということを言いたいなと思っている。好きな人と会える、子どもと笑える、普段の幸せをこれで再確認する、平和とは何か考えられる時間にしたいなと思っています」
▼與那嶺啓 キャスター
「津波さんにとっての623ってなんだという風に感じますか?」
▼津波信一さん(53)
「生き残ってくれたことに感謝しつつ、亡くなってしまった方への追悼ということで、自分の命がつながってきたのを考える日だなぁと思っていますね」
中山さんは生前「思っているだけでは平和は来ない。行動するのよ」と話していたそうですが、津波さんは、舞台化というのが自身にとっての「行動」の第一歩。今後もライフワークとして続けていきたいと話していました。
【舞台「星見草」】
会場:那覇文化芸術劇場なはーと
公演:6月21日(土)午後7時~ 6月22日(日)午前11時~/午後5時~