関税交渉でかなりの焦り?
井上キャスター:
数字で見ても関税は評価しないという声が多かったわけですが、樫本さんは以前「トランプ大統領自身、少し焦り始めているんじゃないか」という話をしていましたが、現時点ではどんなことを感じていますか。
樫元照幸 支局長:
特に関税をめぐっては、「90日間で色々な国と交渉する」「実際に90か国以上が既に問い合わせをしてきている」というようなことを言っていますが、90日間で90か国を相手にするというのはなかなか厳しいですし、不可能です。そういったところでかなり焦りを見せています。
赤沢大臣が今ワシントンに向かっていますが、実は、この会談の日程はまだしっかりと決まっておらず、決まったとしても1時間ほどに限られるのではないかという見方も出ています。
人が限られる中で、アメリカ政府としては、「とにかく色々な交渉を進めて、早く成果を出したい」という思惑がありますが、実際には人も時間も限られる中で、トランプ大統領が満足する成果を出すことができるのか。実務をやる人たちもやきもきしていますし、トランプ大統領自身も焦りを見せていると思います。
井上キャスター:
時間のない中で、トランプ大統領としては「工場をアメリカに移せ」ということですよね。
企業側から考えると、例えば、世界中の企業がこれまでは中国にリスクがある「チャイナプラスワン」というようなことを言われていましたが、今度はアメリカにリスクがこれだけ出てくると「アメリカプラスワン」というような新たなリスクも考えなければいけないということでしょうか?

プロ経営者 ハロルド・ジョージ・メイさん:
ビジネスというのはリスクとの向き合い方、毎日リスクをどういうふうに見るかというのがビジネスなわけです。そのためにはできるだけ先を読みたいんですよね。
トランプ大統領が就任してから100日という話ですが、私から見れば「まだ100日なんだ」と思いました。これだけ世界を変えてしまった人は、朝令暮改も多いわけです。「決めることはこうなんだ」と言ってくれれば、それなりの対処はできますが、すぐ変えるとなると、ビジネスとしても計画のしようがないんです。先が読めない、だから不安になる。
アメリカに工場を作るかどうかと言われても、また4年後にはどうなっているかわからないし、また朝令暮改されても困るといったことで、やはりみんな様子見なんです。
井上キャスター:
トランプ大統領が考えることはわかりませんが、中間選挙あたりまでは突っ走るような形になりそうですか。
樫元照幸 支局長:
中間選挙が2026年の秋に決まっています。そこに向けて経済力を上げていかなければならない訳ですが、経済の専門家によると、2025年の後半には上げ始めなければいけないということです。
トランプ大統領は2025年の後半に大型減税を視野に入れているので、この辺りまで自分の思い描くように物事がスムーズに進むのかどうか。
この100日は思い描いた通りには進んでいないので、この先の100日、そして2025年の後半にどうなっていくのか。そのあたりが注目になってくると思います。
井上キャスター:
メイさんは、焦りがあるという面はどうご覧になっていますか。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
焦りがあるのでしょうか。我々が勝手にそう見ているだけではないでしょうか。
というのも、彼が決断したことがほぼ毎日トップニュースになっています。「自分はこれだけのことをやっているんだ」と今回も自分の支持者に訴えているわけです。
それに成果が出なくても、トランプ大統領のことですから「俺が悪いんじゃなくて相手が悪いんだ」と必ず第三者のせいにしてしまう癖があります。なので、本人は「これだけのことやってるんだ」と本当に思っているのではないでしょうか。
井上キャスター:
確かにトランプ大統領は、ネガティブな報道であっても自分が報道に出るだけでプラスになるんだとずっと話してる人ですね。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
中間選挙となるとまた話が別で、もしそこで負けてしまったら、少しややこしいことになるとは思います。
だからこそ今、一生懸命支持者を集めて「俺はこれだけやっているんだ」「もう大丈夫だ」といったことを言っているんですよね。
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〈プロフィール〉
樫元照幸
JNNワシントン支局長
ポッドキャスト番組「週刊ワシントン」配信中
ハロルド・ジョージ・メイさん
プロ経営者
1963年オランダ生まれ
現パナソニック・アース製薬の社外取締役など