トランプ政権が発足してまもなく100日。アメリカンドリームを求めて、南米からアメリカを目指す移民たちの流れに、今、「逆流現象」が起きています。

中米パナマの首都から車でおよそ3時間。海沿いの町には毎日50人以上の移民が押し寄せているといいます。

記者
「早朝にもかかわらず、コロンビアに向かう船に乗ろうと多くの移民が列を成しています」

移民の目当てはパナマから南へ国境を越えるボート。移民の流れの変化に気づき、1月末からボートの運航を始めたという男性。料金は1人3万5000円あまりで、およそ7時間かけ、南米コロンビアに向かいます。

ボートの運航者
「南へ向かう移民は、どんどん増えると聞いているよ」

かつては1年間に50万人以上がジャングルを通り、アメリカを目指して北へと向かった南米からの移民たちが、今、南へと逆流し始めています。なぜなのでしょうか。

3人の子どもたちとボートを待つデイリンさん(27)。故郷ベネズエラの町はマフィアに支配されました。

デイリンさん
「店を経営していても、マフィアがやってきて商品やすべてを奪っていきます」

マフィアに抵抗すれば殺される。アメリカに渡り、子どもたちに安全な生活をさせてあげたい。

去年11月にベネズエラを出発し、バスやボートを乗り継ぎ、時にはギャングに拘束されながらも、北へ北へと国境を越え、メキシコに到着。2月1日に入国手続きをする予約もとれました。しかし…

アメリカ トランプ大統領(1月20日)
「何百万もの犯罪的外国人を出身地に戻すプロセスを開始する」

その10日前にトランプ政権が発足。入国した移民は拘束され、強制送還される。デイリンさんはアメリカへの入国をあきらめざるをえませんでした。

デイリンさん
「トランプ大統領は心のない人間です。私や多くの人の夢を打ち砕いたのだから」

来た道を南へ南へと引き返し、パナマのこの町に辿りついたのです。

デイリンさん
「子どもたちは私に尋ねるんです。『ママ、アメリカへ行けないの?』って。私はこう答えるしかありません。『いろいろなことが起きて無理になっちゃったのよ』と」

一家は故郷ベネズエラに戻ろうとしていますが、お金が足りず、めどは立っていません。

翌朝、船着場にはボートに乗り込もうと、きょうも多くの移民の姿が。しかし、デイリンさんの姿は…。インタビューをお願いしましたが「話す気持ちになれない」と言います。

道をたたれた移民たちの「アメリカンドリーム」。行き場をなくした移民たちは、今、祖国に戻るため、再び険しい道を進んでいます。