「独立リーガーには珍しい環境でやらせてもらっている自覚はあります」。こう話すのは、独立リーグ・徳島インディゴソックスに所属する中山晶量投手(23)。身長188㎝、体重90㎏の堂々たる体躯から投げおろす最速150kmの速球と、鋭く落ちるフォークが持ち味の本格派右腕だ。

独立リーグといえば「月給が約10万円」「半年間しか給料が出ない」など厳しい環境でプロを目指している若者が多く集うイメージが強いが、中山は違う。
清掃会社を経営する祖父、その会社で専務を務める父、そして祖母、母と実家で5人暮らし。祖父は野球にかかる様々な費用をサポートし、大学野球の経験がある父は遠方でも必ず応援に訪れる。祖母と母は食事や中山の体調管理を徹底。家族全員で中山のNPB入りを応援している。

祖父の経営する会社の本社1階ガレージには、少年時代に作られた中山専用の練習スペースがある。バッティングマシーンや専用のトレーニング器具が今も所狭しと並べられていて、現在もチームでの練習がない時や雨天時に使用している。

孫を全面的にサポートしてきた祖父は「プロで活躍してもらいたい。これまでも練習で音を上げたことはないし、プロの監督コーチにしっかり鍛えてもらいたい」と期待を隠しきれない。時には会社関係者など4、50人を連れて球場に応援しに行くこともあるという。

こうした家族からのサポートについて中山は「家族にはすごく甘えている自覚があって、家族のサポートも受けられて幸せだなって。だからこそドラフトにかかるっていうのが家族に恩返しできるチャンスだと思っています」と話す。

小学校から野球を始めた中山は、地元の名門・鳴門高校に進学し甲子園に3度出場。打者としても活躍し、高校3年では夏の甲子園初戦の盛岡大付戦で殊勲となるホームランも放っている。

大学は星野仙一さんら多数のプロ野球選手を輩出した明治大学に進学したが、4年間でわずか4試合、5イニングと満足いく結果を残せなかった。それでもプロ志望届を提出し、4球団から調査書を受け取ったが、結局指名は無し。NPB入りを諦めきれなかった中山は関係者からの熱心な誘いもあり、2021年、地元の徳島インディゴソックスへの入団を決めた。
NPB入りへ2度目の挑戦となった昨季は、相次ぐ故障などで満足のいくシーズンを送れなかった。

「NPB挑戦の最後」と決めて臨んだ今季は、先発・リリーフ問わず22試合に登板。69回1/3を投げ、防御率2.73を記録した。特にリリーフ登板した13試合では防御率0.00と結果を残し「3度目の正直」となるNPB入りに向け、確かな手ごたえを感じている。

「どういう状況でも良いからNPBに行くっていうのが家族への恩返し」と意気込む中山。家族の悲願であるNPB入りを果たせるか。運命のドラフト会議は20日に行われる。

■中山晶量(なかやま・てるかず)
1999年2月8日生まれ。徳島県徳島市出身。高校時代は地元の名門・鳴門高校で甲子園に3度出場し、大学は明治大学に進学。現在は9年連続N P B選手を輩出している徳島インディゴソックスのエース格として今年のドラフトでプロ入りを目指している。