菅さんは、いまは資料館の収蔵庫に眠る3体を2024年5月から8か月間借り受け、文化財の保存修復に関わる専門家とともに調査を始めました。

もう一度、「人形論争」を起こすつもりはありません。ただ “作りもの” が持つ「力」や「危うさ」を明らかにするためにも、人形を忘れてはいけないと考えています。

菅 亮平さん
「昨年5月に私が保管庫の扉を開けるまで7年間、誰の目にも触れていない状況ではありました。もしかしたらそのまま風化したかもしれない。人形が風化する前に、人形の役割について考える状況をつくりたかった」

人形のX線透過写真です。
鉄の台座と棒で固定され、肩や腰はボルトで止めてあることが分かります。
精巧なガラスの義眼で作られた目は、本物のように見えます。

白い背景の高精細カメラで撮影した写真は、原爆資料館では見えなかった細部まで分かります。
垂れ下がった皮膚に、人毛とみられる髪の毛。
女学生の名札には「村山」と書かれていました。

菅 亮平さん
「燃えさかる炎、地面が燃えている設定なので、下から光を強い光を当てて…」

原爆資料館で展示されていた当時のライティングを再現した写真では、そこに人がいるかのような臨場感が生まれます。

菅 亮平さん
「原爆被害の事実を矮小化させて理解させてしまうという“リスク”がある一方で、ぱっと見て、原子爆弾というものが落ちると街は、人はこうなるということが、“イメージ”として突きつけられる」