「僕は体の性は女性だった、しかし心の性は男性」「今の社会でカムアウトすることは差別の矢面にたつリスクがある。でも知ってもらいたい」トランスジェンダーの生きやすい社会を目指し、国会で初めての集会が開かれました。

■性別変更の”手術要件”なくして トランスジェンダーの訴え


生まれた性と性自認が一致しない”トランスジェンダー”。こうした人たちの生きやすい社会を目指し、10月12日、国会で初めての集会が開かれ、与党や野党の国会議員も出席しました。


Transgender Japan 畑野とまとさん
「性別変更に関する法律であるとか、就労差別であるとか、就学差別であるとか。この現実を知っていただきたい」



彼らが主に訴えたのは、性別の変更に関する法律の見直しです。

現在の法律では、「性同一性障害の特例法」で戸籍上の性別変更が認められていますが、

▽18歳以上である
▽現在、結婚していない
▽未成年の子どもがいない
▽生殖腺や生殖機能がない


などが、要件として求められています。


ところが、そもそも法律の前提となっている「性同一性障害」の扱いそのものが大きく変化している現状があります。

WHO=世界保健機関は、けがや病気などのリストを2019年に改定。「性同一性障害」をこれまでの「精神障害」の分類から除外し、名前を「性別不合」に変更したのです。



ヒューマン・ライツ・ウォッチ 土井香苗さん
「世界は非常に大きく動いたということがあります。(特例法は)残念ながら非常に遅れたモデルというふうになっています」


現在の特例法で、当事者が特に見直しを求めているのが、生殖能力をなくす手術を受けなければ性別変更ができない点です。

■「手術を望まない」卵巣摘出には身体と金銭面のリスクが


鈴木げんさん(47)
「僕自身は卵巣の摘出手術を望んでいません。僕は今この身体のまま、戸籍の性別変更を望んでいます」

幼い頃から「女の子」とされることに苦痛を感じていた鈴木げんさん。


ホルモン療法や乳腺の摘出手術などを行い、いまは男性として生きています。


戸籍上の性別を変更するためには、卵巣を摘出する必要がありますが、
鈴木さんは、身体と金銭面のリスクを負ってまで手術する必要性を感じないと話します。


鈴木げんさん
「卵巣があってもなくても見た目は何も変わらず、自分は男であると確信しているので、この手術は自分には必要ないと思っています。これら(手術)のことは自分で決められるはずのことです」

中には、戸籍上の性別を男性に変えるため、卵巣や子宮などの摘出手術を受けた人もいます。

集会に参加した当事者(30代)
「1か月くらいは仕事ができないとかはあるので、時間とお金と命を懸けてまで本当にやらなきゃいけないことなのかっていうのが。やらなくて済むのであれば、これからの子たちにはそういう選択肢があると伝えたい」