地元で「ふるこはん」の愛称で親しまれている富山県高岡市の勝興寺が国宝に指定されます。国の文化審議会が12日、勝興寺を国宝に指定するよう答申しました。これで富山県内の国宝は高岡市の瑞龍寺に続いて2件目となります。

新たに国宝に指定されるのは、富山県高岡市伏木にある勝興寺(しょうこうじ)です。越中国府跡と伝わる地に建つ浄土真宗の寺院で、江戸時代には加賀前田家と密接な関係を保ち壮大な伽藍を築きました。

地方の寺院としては破格の規模を持ち境内の12棟は、国の重要文化財に指定されています。今回、国宝には本堂と大広間及び式台の2棟が指定される見通しです。

勝興寺 土山照慎 住職:
「いずれはなるかなと思っていましたけど、意外に早く国宝になるいうことで、ちょっと私自身もまだ驚いているところですね。先人の方々のご苦労がようやく実を結んだと」

地元では「ふるこはん」と親しみを込めて呼ばれる勝興寺。境内の「七不思議」も有名です。本堂南側の池は、どんな干ばつでも決して干上がることはないと伝わっていたり、寺に伝わる蓮如上人愛用の硯は、蓮如上人が筆をとると自然に水が湧き出ると言われていたり…。勝興寺はミステリーに満ちた寺でもあります。

1795年に建立されてから長年修理されておらず、1998年(平成10年)には「平成の大修理」と呼ばれる修復工事が始まります。

工事は23年間にわたって行われ、去年ようやく終了。保存修理事業費はおよそ70億円にのぼりました。

勝興寺文化財保存・活用事業団 氷見哲正 理事長:
「できるだけ江戸時代の様子を再現するような修理に心がけたところです。この本堂ぜひ多くの方に入っていただいて、この荘厳な空気をぜひ味わっていただきたい」

国宝に指定される「本堂」は、江戸時代後期を代表する大型寺院の本堂のひとつで、浄土真宗の越中の拠点として大勢の参拝者に対応できるよう大型化しました。

極楽浄土を意識した内陣をはじめ、参拝者の目を意識した豊かな装飾も特徴です。公式な接客や集会のための大広間も、当時の浄土真宗の隆盛を伝えているということです。

江戸時代の壮麗な姿を取り戻し、勝興寺の国宝指定は地元・伏木の悲願でした。

勝興寺文化財保存・活用事業団 氷見哲正 理事長:
「伏木地区にとって非常に大きいと思います。勝興寺を取り巻く様々な観光名所や歴史的な地所に再び光があたって多くの人が訪れて、伏木地区がにぎわっていくんじゃないかと大いに期待してるところです」

富山県内の国宝は高岡市の瑞龍寺に続き2件目で、高岡市は2つの国宝をもつ自治体となります。

国宝指定の答申を受けて高岡市の角田悠紀市長は、「大変名誉なことであり、まずは市民の皆様とともに喜びを分かち合いたいと思います。歴史都市高岡として恥じぬ重責を一層担うことになり、引き続き文化財の保存及び活用に向けて気が引き締まる思いです」とコメントしています。