トランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談が激しい口論で物別れに終わり、ウクライナ情勢の行方はさらに不透明になりました。侵略が始まって3年、頭越しの停戦交渉が進む事態に人々は何を思うのか。ウクライナの今を取材しました。

“ドローン攻撃で”右足・右手の指を失った兵士 今も、体中に細かいドローンの破片が残る 

記者
「キーウ郊外にある墓地です。ウクライナの国旗が掲げられているところは、すべて兵士たちの墓です。この一帯は2022年の侵攻が始まってから、亡くなった多くの人たちを埋葬するために、新たに増設されました」

ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから3年。

これまでにウクライナ軍兵士約4万6000人が死亡し、民間人の死者も1万2000人を超えた。

リビウにある国立リハビリテーションセンター。
現在、200人以上の負傷した兵士らが入院・通院している。

敵のドローンが直接身体に当たり、右足と右手の指を失った元兵士のバシリさん(24)。

これは、病院に運ばれた直後の映像。
ドローンを操縦していたところ、攻撃を受けた。

元兵士 バシリさん
「激しい砲撃の中で、敵のドローンが接近する音に気付かず、反応する時間もありませんでした。ショックが大きかったので、最初の30分間は痛みを全く感じませんでした」
意識を取り戻すと、足が皮膚でかろうじてつながっていた。

ロシアは、ドローンの生産を、この1年で10倍に増やすとしている。

このリハビリセンターでは、ドローン攻撃による負傷兵は、全体の4人に1人と1年前より増加したという。

バシリさんが見せてくれたのは、身体から取り出したドローンの破片。
こうした細かい破片をすべて取り除くのは難しく、いまも体中に残っている。

元兵士バシリさん
「これも破片で、そのほとんどは一生残ると思います。針で刺すような痛みに似ています。ドローンは進化しているので、逃げるのは非常に難しいです」

激しい痛みや将来への不安から、精神を病む患者もいるという。
そのため、ケアの一環として、ここではアートセラピーが行われている。

理学療法・リハビリテーション医 ヤロスラブ・ゼリズコさん
「攻撃を受けた直後は、特に、身体を治すことに集中しています。けがが回復し、リハビリを終えたころに、心の問題に気づくのです。センターの助けが必要になるのです」

バシリさんのもとには、毎日、恋人が見舞いに来るという。

バシリさんへの攻撃をどう受け止めるのか、尋ねると…

バシリさんの恋人 サーシャさん(22)
「なんて答えたらいいのか。とても難しい。私たちはもう疲れてしまいました。でも何とかやっています。ほかに道はないから」

リハビリセンターでは入院患者が増え続けていることもあり、脊髄の治療に特化した施設を新設したところだった。

だが、アメリカのトランプ大統領が海外援助を管轄するUSAIDの活動を停止したことで届くはずの備品が入らなくなった。

この3年で、ウクライナ東部を中心にロシアが掌握したとされる地域がさらに広がった。