富山県警山岳警備隊の密着取材、後編です。先月の3連休は遭難事故が相次ぎ、山岳警備隊の出動は8回にも及びました。まさに命の砦とも呼べる存在ですが私たちはその救出の瞬間を目撃しました。
認知症のお年寄りが行方不明に。
救助された男性:
「痛い。痛い。痛い」
相次ぐ遭難事故。少し秋の連休、県警山岳警備隊に密着しました。先月25日、午前5時半。
記者:
「おはようございます」
隊員:
「おはようございます。」
山岳警備隊初の女性隊員・田中明希子さん。(29)。
富山県警山岳警備隊 田中明希子隊員:
「朝のジョギングというか」
トレーニングのため登山道をかけあがります。
田中隊員:
「(山に)朝日が当たっていると、きょうも1日がんばろうという気力がわいてきます」
山頂を目指す大勢の登山者たち。秋の大型連休最終日、立山・雄山は最高の賑わいを見せました。
「万歳、万歳、万歳」
記者:
「何歳ですか」
子ども:
「4歳」
登山者:
「すごいきれいだなっていうのと達成感がすごいです」
登山者:
「これだけの景色見れるんだったら苦労した甲斐あったよね」
一方、山岳警備隊が待機する室道の警備派出所では。
無線:
「9番の鎖のところから滑落して5メートル下にいる。呼びかけしても応答がない状況ですね」
剱岳のカニのヨコバイ付近で男性が滑落したとの一報が。県警の連絡を受けた消防の防災ヘリが現場に急行。男性は救助されましたがその後、亡くなりました。
午前11時ごろ。110番通報が入りました。
富山県警山岳警備隊 浅川和彦隊員:
「山荘の中もいなかった?」
田中隊員:
「確認してもらったんですけど」
浅川隊員:
「そっち見た?」
田中隊員:
「見ました」
70代の男性が室堂ターミナルで妻とはぐれ、行方不明になったというのです。
無線:
「ターミナル周辺の捜索に転進願います」
浅川隊員:
「了解です」
男性は認知症で、さらに遠くへ歩いていってしまった可能性が高いとみて、車での捜索に切り替えます。
浅川隊員:
「あそこに高原ホテルというのがあるんですけどそこで
位置情報がとれたので」
記者:
「さっきの行方不明の方ですか?」
浅川隊員:
「そうです」
目撃情報がないか聞き込みを続けますが、見つかりません。
田中隊員:
「80歳ぐらいのおじいちゃんがこことか通ったりしてないですか?歩いたりして紺色のパーカーを着たおじいちゃん何ですけど」
作業をしていた男性:
「私はちょっとここに入っていたので気がつかなかったです」
車を降りた田中隊員が、山の中を走っていきます。何かを見つけたのでしょうか?そして5分後。
記者:
「見つかりました。田中さん見つけました」
男性は無事に発見されました。天狗平の沢の中にいたといいます。ケガはありませんでした。
田中隊員:
「よかった」
男性の妻:
「どうしたの」
男性は無事、妻と再会できました。男性の妻「今晩寝れないかと思った。」
富山県警山岳警備隊 飛弾晶夫隊長:
「会えてよかった」
捜索の手がかりとなったのは男性の靴につけられていたGPSでした。
飛弾隊長:
「位置取れた場所が人に入らない沢だからもしこれがなかったら絶対に見つけられない」
田中隊員:
「弥陀ヶ原ホテルに」
息つく間もなく、次の110番通報が入りました。3歳の男の子がケガをしたとの一報です。急いで現場に到着。
警察官になる前は看護師だった田中隊員、ケガをした子どもへの対応はさすがです。
田中隊員:
「痛いなってところあるかな?」「頭痛い?」「じゃあごめん。体触ってくよ?痛い?」
優しい口調で男の子に語りかけます。田中隊員も幼いころ、父親から山に連れて行ってもらったといいます。
田中隊員:
「もともと山が好きな父と小さいころから山に行ってて、山って色んな楽しさだったり苦しさだったり厳しさだったりいろいろ教えてもらった原点じゃないですけど山に携わっていきたいという、でプラスで人の役にたてたらいいなと」
帰り際にまたもや救助の要請です。
田中隊員:
「雄山のどこなんですか?」
浅川隊員:
「分かんない。三ノ越付近」
立山・雄山への登山途中で30代の男性がケガをしたとの通報です。連絡を受けた早坂隊員が現場へかけあがります。
富山県警山岳警備隊 早坂 陽隊員:
「はあはあはあ、上ですか?」
記者:
「上です」
早坂隊員:
「あー、了解」
ケガをした男性のもとへ早坂隊員が到着しました。
早坂隊員:
「パッと見出血とかなさそうやね?ちょっと見せてね」
男性:
「痛い、痛い、痛い」
早坂隊員:
「ごめん、ごめん。早坂から立山室堂14時10分遭難者と接触」
男性:
「あ、痛い痛い痛い」
左足に激しい痛みを訴える男性。骨が折れているようです。応急処置に足首を固定します。防災ヘリが現場に到着。安全のため周囲の登山者を退避させます。
消防隊員がケガをした男性のもとに。男性は無事ヘリで病院に運ばれました。
今年9月の3連休、県内の山では6件の遭難事故が発生。山岳警備隊の出動は8回にのぼりました。
田中隊員:
「遭難者は家族と思えという言葉を私はすごく大事にしていてその気持ちは忘れずがんばっていきたいと思います」
どんな隊員に今後なっていきたい?
富山県警山岳警備隊 田中明希子隊員:
「自分は強くて優しくてタフな隊員になりたいと思っています。仲間にも厳しい人仲間には厳しい人がいいのかもしれませんが、私は仲間もチームだと思うし優しい隊員になりたいです」
強く優しい隊員になりたい。登山者の安全を守るために。田中隊員はきょうも走り続けています。
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