鎌倉時代にモンゴル軍が数千の軍船で攻めてきた“元寇”。襲来した船の「碇」が今月、長崎沖の水深20メートルを超える海底から741年ぶりに回収された。JNNのダイバーチームはその瞬間に密着。6~7メートルはあったとみられる木でつくられた大型の碇は、幾多の時代を越えてもなおその姿を残していた。資料価値の高い“遺物”を壊さないように慎重に動かすノウハウが得られたことは、まだ海底に眠る元寇船“本体”の引き揚げにもつながるマイルストーンだ。

◆約10年がかりのミッション「海底から引き揚げよ」

海底に沈む「碇」撮影2013年

元寇船の「碇」が見つかったのは今から9年前の2013年にさかのぼる。先立って2011年に船本体が長崎県松浦市の鷹島沖の海底から見つかり、ほぼ同じ場所で碇も発見された。長さ1メートル75センチの木材と四角い石が残されていた。これまでに鷹島で見つかっていない形の碇だった。

「大型の船のものではないか」と推測したのは松浦市の調査を主導した國學院大學の池田栄史教授だ。歯の部分は2メートルほどあり、碇としては大型の部類に入るという。

しかし、当時は引き揚げようにも、保存する技術や場所も資金も十分ではなかった。そこで松浦市は腐食しないよう碇に土のうを積み、海底の泥の中にいったん埋め戻し、時が来るのを待っていたのだ。