2度目となる大統領就任式を控え、トランプ次期政権の政策づくりが本格化しています。目玉政策である関税賦課政策について、米メディアは、政権発足後すぐに『緊急事態宣言』を出し、全世界一律に付加関税を課すことを検討していると報じました。
グリーンランド購入など言いたい放題

大統領選挙での当選後、しばし沈黙を守っていたアメリカのトランプ次期大統領は7日、記者会見を開きました。「デンマーク領のグリーンランドを購入したい」、「パナマ運河のアメリカへの返還を求める」、「カナダは51番目の州に」、「メキシコ湾の呼称をアメリカ湾に」などと、領土拡張への野心を隠さず、目的達成のためには軍事的経済的威圧も辞さない姿勢を示しました。まさに言いたい放題の炸裂ぶりでした。
こうしたやり方は、1期目でも十分見てきたので、トランプ氏の正確な胸の内を詮索したところであまり意味はありません。自分の力を見せつけ、怖れさせ、いずれあり得る個別の取り引きを有利に進めるための舞台作りだと見るのが妥当でしょう。
記者会見ではウクライナとロシアの停戦について、これまで「就任後24時間以内に実現する」と言っていたものを、「就任後半年で」といきなり主張を大きく後退させました。実現の難しさが分かって来たからでしょう。
そうした中で、自らの岩盤支持層である労働者層に直ちにアピールする政策が、各国への関税賦課政策で、就任直後に発動されるのではないかとの見方が広がっています。
『緊急事態宣言』で一律輸入関税か
アメリカのCNNテレビは8日、トランプ次期大統領が就任後に、1977年制定の「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づく『緊急事態宣言』を出し、それに基づいて、全世界に対して一律に輸入関税を課すことを検討していると報じました。
この法律では、アメリカ経済に異例かつ重大な脅威がある場合に大統領が緊急事態を宣言して外為取引や貿易を規制できることになっていて、発動されれば初めてのケースになるということです。
特定の国や製品に対して、報復的な関税を課す仕組みは、他にも通商法や関税法にありますが、選挙中にトランプ氏は、すべての国に対し10~20%の輸入関税をかけると主張しており、全世界、全製品に対して一律の関税上乗せをするには、上記のような緊急事態と認定する以外、法的根拠が見いだせないのでしょう。
戦争が起きているわけでも、国際収支危機に直面しているわけでもなく、経済一人勝ち状態のアメリカ経済のどこが緊急事態なのかと言いたくもなりますが、この手法であれば、議会を通す必要もなく、大統領の宣言だけで実現可能です。アメリカの労働者を輸入品から守るために立ち上がったと、スタートダッシュでアピールする狙いです。関税については、やはり本気だと見るべきでしょう。