そして、快挙を成し遂げたのは女子だけではない。男子シングルスで出場していた張本美和の兄・智和(21、智和企画)も、19歳・中国若手のエース、林詩棟(りんしとう、世界ランク2位)に3-1で快勝。日本男子シングルスで50年ぶりの金メダルを獲得した。兄・智和にも、当時のことを聞くことが出来た。
Q.アジア選手権を振り返って
智和:団体戦とダブルスで負けてしまって良いスタートではなかったんですけど、シングルスで最低でもメダルを獲って、監督や皆さんに恩返ししたいと思っていたので、そこをモチベーションに頑張りました。
Q.実感は
智和:勝った瞬間は信じられなくて、すごく嬉しかったんですけど、帰国してからは周りの反応はありましたけど、自分の中ではひと段落ついたかな。いつもコートの中ではすごく嬉しいんですけど、コートを出てホテルに帰るといつもの生活なので、僕は結構引きずらないというか。負けた時は引きずるが、意外と勝った時は冷静にいられる方です。
Q.アジア選手権の金メダルは大きな財産になったのでは
智和:オリンピック・世界選手権で金メダルを目指すのためには一歩一歩踏み出さないといけないと思うので、そのための一歩としてアジア選手権はいい一歩だったと思うので、ここで金メダルを獲れたからこそ、次は世界選手権で金メダル、4年後にロス五輪で金メダルだと言えると思うので、そのためにも本当に大きな一歩を踏み出せたと思います。
Q.金メダルを獲得出来た要因は
智和:パリオリンピックで悔しい負け方をして、そこで努力を続けてきたのが一番。パリの時は帰国して2、3日で練習再開しましたし、負けて休みたいというよりは、すぐに練習を再開して次の大会、次の大会と思っていたので、その気持ちが少しは報われたのかなと思います。
Q.その原動力は
智和:アジア選手権の金メダルもそうですし、世界選手権、オリンピックの金メダルはまだ達成していないので、達成していない限りはそれが原動力になりますし、やめようと思うより、「次こそ獲りたい」と思うので、パリでメダルを獲れなかったのでやるしかなと思いました。
Q.攻める気持ちを貫けた
智和:取られたゲームも何回かありましたけど、取られた中でも攻めることは出来て、攻めた結果取られたゲームは意外とスッキリしていたもので、こうやって攻めて取られたから、次は違う攻めをしようと思いました。攻めずに取られると、次にどうしようかとか、どう攻めていいか分からないので、このままでいいんじゃないかとか、今回は2-1になる場面が多くて2-0から2-1、確率的にみると僕が6割取っていて、同じことを続ければ僕が取る可能性が高いと思って今までやってきた中で、単なる確率論ではなくて相手が入ってきている中では、この1ゲームだけをみれば相手が100%、僕は0%と考えをしてから、前の2ゲームは別物と考えてプレーすることが出来ました。
Q.アジア選手権で意識が変わったことは
智和:アジア選手権とか世界選手権、オリンピックはいつも以上に日の丸を背負っている気持ちになりますし、普段のポイントを稼ぐ大会とはまた違う大会なので、オリンピック後で疲れていようが結果だけが全てだと思っていたので、団体とダブルスがすごく悔しかったので、またオリンピックのようになりたくないと思いながら、シングルスだけでもという気持ちが芽生えていたので、その責任感を持ちながらプレッシャーに押しつぶされずにメダルを獲れたことはすごく成長できたかな思います。

Q.今後の目標は
智和:ロス五輪でシングルスでの金メダルはこの4年間で一番大きい目標。その次は来年に個人戦がある世界選手権。五輪のシングルスでの金メダルに次ぐ2番目の価値があると思うので、その2つというのはこの4年間で達成したいです。
Q.ロス五輪で金メダルを獲得するためにすべきこと
智和:日々練習を頑張るしかないかなと。いろんなことがありますけど、僕たちには練習しかできないので練習・努力・試合、勝ち負けがあって、それを反省して日本に持ち帰ってまた練習する。つまらない生活かもしれないですけど、それしかすることがないので、特別何かを頑張るとか、秘訣みたいなものがあるわけではなく、地道に他の人よりも1球でも多く打つとか、それでも勝てるか分からないけど、自分が高い自己満足を設定できれば、それを達成することで成長できると思っています。
Q.使命感が強い
智和:今ランキングも日本で1番ですし、ここ5、6年ずっと一番でやってきたので、他の選手が強くなることは嬉しい事ですけど、個人としては自分が結果を出したいです。選手目線で言えば、底上げよりも、自分が勝つことが大切だと思っています。他の選手が達成する前に自分が達成する、それが日本の選手であろうが、他の海外の選手であろうが、強い選手が多くなっているので、その中でも自分が達成したいと思う気持ちが強いです。
そして、ただ強いだけでなく、それに値する練習量や振る舞いもそうですし、卓球が一番強いから日本で一番の選手ではないので、水谷隼選手(五輪2大会連続メダル)も、誰よりも努力して勝って負けてを繰り返して苦労したからこそ、誰もが認める日本のエースでしたし、僕もそれに値するような選手にならないといけないと思うので、単に優勝したから、強いから、勝てないからあいつがエースだではなく、人間的な部分でもあいつには適わないって思われるような選手にならないといけないと思っています。

















