床材にしっくい 20年前の開発が商機につながった

しっくいは通常のままでは耐久性の面から床には塗れない。しかし田川産業では、床材としても活用できるようにと、高い圧力をかけてしっくいを強固なタイルに加工するプレス機を独自に設計したのだ。

転機が訪れたのは去年。取引のある商社から、「耐熱性のあるファインセラミックス」を成形してほしいと頼まれた。

必要とされたのは、半導体の基盤製造に必要な、高温のプラズマに耐えられる素材だった。

高圧をかけることで、形や強度の質を均一に保ったまま薄くできるため、従来の製品よりも加工しやすく成形などの工程を大幅に短縮できるのが強みだ。

田川産業・営業部足立太郎さん「お客様から『実は、これは半導体の製造装置、周辺機器に使いますよ』という話をいただいた時は『まさか我々が半導体に関われるとはな』という思いはありました。ちょっとびっくりしました。市場は非常に大きいので、弊社が何か貢献できればと思います」

このプレス機で、年間約100億円の売り上げを期待している。

高田工業所 技術いかし「超音波カッティング装置」

「ものづくりの街」と知られる福岡県北九州市では、様々な企業が半導体産業への参入に向け動き出している。

八幡西区の「高田工業所」。1940年創業のこの会社は、製鉄や化学など産業設備の設計や製造、建設、メンテナンスに携わってきた。

長年培ってきた製造技術を生かし新たな収益の柱を目指し、2011年に新部署を立ち上げた。半導体を作るために使われる装置の製造を受け持つ。

高田工業所仲村公孝取締役(装置事業部担当)「これは高速で高精度に切る機械になります」

そのひとつが、回路を書き込んだ半導体ウエハーを細かいチップに切断する超音波カッティング装置。回転するブレードに、1秒間に4万回という上下の振動を与えて切断していく。

硬い材料でも切断面がきれいに仕上がり、その後の磨きの工程を大幅に減らせるのが、高田工業所の超音波カッティング装置の特徴だ。

最も薄いものは、約40ミクロン。髪の毛1本の半分ぐらいの幅だ。

また、超音波を使って切断し断面を調べる装置や半導体ウエハーを1枚ずつ洗浄し、乾燥させる装置も用意した。