6日に行われた阪神戦でヤクルト・村上宗隆(22)がソロ本塁打を放ち、野村克也氏(1963年)、落合博満氏(1985年)に並ぶシーズン52本塁打を達成した。日本人としては王貞治氏の55本塁打に次いで2位となり、大記録達成も見えて来た。
2020年2月に亡くなった野村氏は生前、まだ1軍デビュー前の未来のスラッガーの元を訪れ、ある金言を送っていた。

2018年2月、当時82歳の野村氏はヤクルトの春季2軍キャンプを視察した。いまや注目を一身に集める22歳は、当時入団1年目。データを駆使した「ID野球」でヤクルトをリーグ優勝4回、3度の日本一に導いた名将と、緊張の初対面を果たしていた。

野村克也氏
野村氏:
はじめまして。

村上選手:
はじめまして。村上宗隆です!

野村氏:
打撃で何に一番気をつけてる?

村上選手:
疲れが溜まると体が開く癖があるので…

野村氏:
俺は足しか考えたことがない。足を正しく動かせば上(半身)は自然とついてくるから。
初めて取材で来たんだけど(村上選手に対して)良かった。初めて知った。注目の選手だね。名前なんていうんだっけ?村上?マッシー・村上か。関係ない?笑

※「マッシー・村上」は日本人初のメジャーリーガー、村上雅則氏の愛称。法政二高から1963年に南海入団、サンフランシスコ・ジャイアンツへ2年間野球留学し、その後南海に復帰。日本ハムなどでも活躍した。

村上選手:
関係ないです。笑

冗談も交えながら語りかけた野村氏は、村上の手に注目した。

手の大きさを比べる野村氏と村上選手
野村氏:
わぁ大きいわ。すげぇ。(手を合わせて)大人と子どもだよ。
ホームランは狙って打ってるの?

村上選手:
いや、打ってないです。

野村氏:
王(貞治氏)ともそんな話したんだけど「狙ってない」って言うんだよ。日本で一番ホームランを打ってる王でも狙ったことないって言うんだから。
自分を信じて。自分のバッティングをすれば勝手に(打球は)飛ぶんだから。その体で証明できる。王を凌ぐバッターになってください。

村上選手:
はい!

日本人最多のシーズン55本塁打、通算868本塁打の世界記録を持つ王貞治氏。この大記録を超える程のバッターに…野村氏はそれほどの可能性を当時18歳の村上に感じていた。

野村氏:
手が届かないなんてとんでもない!同じ人間なんだから。王の記録(55本)なんて破っちゃえ!!とりあえず俺の記録(52本)破れ。笑

激励からわずか4年半。その野村氏の記録に並び、王氏の記録まではあと3本に迫った。チームは残り21試合(6日終了時点)。2013年にバレンティン(当時ヤクルト)が記録した最多本塁打、60本も射程圏内だ。村上はさらに、打率、打点でもリーグトップを走っていて、落合氏が28歳で達成した記録を更新しての、史上最年少三冠王も見えている。

52本目を放ち生還した村上は、手を合わせ天を仰いだ。「偉大な野村克也さんと本塁打数が並ぶことができて光栄です」。大先輩のエールは今も村上の背中を押しているに違いない。
野村氏と村上選手