「日本は最高のスイートスポット」韓国スタートアップのグローバル戦略

「ここ10年、政府による資金提供はとても効果的でした。今後はそうしたスタートアップのグローバル市場への挑戦が次の大きな一手となるという機運が韓国では醸成されています」

世界銀行によると韓国のVC投資額は同国のGDP比0.26%で、アメリカとカナダに次いでOECDで3番目の高さを誇る。多くのユニコーン企業が生まれるなど、政府系ファンドが主導するVC投資は一定の成果を生み出しているが、エコシステムの更なる成長のためには海外市場への進出が不可欠だという。

「私たちは海外市場を理解することから始めるべきだと考え、数年かけて各地域でのネットワーク構築を始めました。具体的には北米、日本、東南アジア、中東、ヨーロッパの5つの市場で実施しましたが、規模や文化、国としての発展度合も異なる中、市場規模が大きく、経済構造に類似点がある日本市場を第一に考えています」

日本企業と韓国スタートアップとのオープンイノベーション(組織内外との交流を通じ新たな価値を創出すること)などの共創を通じた事業進出に期待し、数社のスタートアップ企業を来日させ、事業会社へと繋ぐ取り組みも行っている。日本企業との連携が決まったスタートアップにはd・campが資金を提供する形で協業を後押しする予定だ。

「日本は韓国スタートアップにとって最高のスイートスポットです。高齢化社会と大企業の成長鈍化、日韓は共同の課題を抱えている」と語るパク氏。次世代にむけて事態を打開する重要な要素はスタートアップによるイノベーションだと確信しているという。

「日本企業には市場での実績や深いビジネス慣習理解、顧客との接点などの資産があり、韓国のスタートアップ企業には貪欲さとイノベーションのアイディアがある。それらが組み合わされば大いなる成長の可能性が生まれる」と熱弁する。

日本にも、経済産業省などが中心となって進めるJ-startupや東京都のX-HUB TOKYOの取り組みなど、スタートアップの海外展開支援を行う機関やプログラムは存在するが、まだまだ少数である印象だ。

スタートアップの発掘、育成、海外支援までを官民一体となって、多くの機関が絶え間ない支援の仕組みやコミュニティを構築し、熱意と情熱を持って取り組む姿に、学ぶところがあるかもしれない。

インタビュアー:TBSイノベーションパートナーズ 出水麻衣