担い手不足に悩む伝統工芸を、未来につなぐ取り組みです。高岡市の菅笠職人がどこにでもある古民家をこれまでになかった施設に作り変えました。ドローンのレース場です。

400年の歴史を持つ「越中福岡(えっちゅうふくおか)の菅笠(すげがさ)」。

国の伝統工芸品にも指定されていて、農作業での日除けや雨よけなどに使われてきました。

しかし、近年は人々の生活スタイルの変化や後継者不足により衰退傾向にあります。

「この苦境を打ち破りたい」と8年前菅笠業界に飛び込んだのが中山煌雲(なかやま・こううん)さん。

デザイン性あふれる芸術作品としての菅笠を制作するなど菅笠の可能性を広げようと日々奮闘しています。

中山煌雲さん:
「今まで散々いろんなPRをしてきたが、ここでひとつ今までになかったようなPRの仕方がないものかなとずっと考えていた」

「越中福岡の菅笠を盛り上げたい!」そんな思いからこの夏、中山さんは新たな挑戦を始めました。それがこちら。

縁側には直立した菅(すげ)…?
和室には、おりんや銅器の数々。こちらの部屋は、
ピカピカ光る、輪っかと日本人形が―。

独特の世界観で装飾された古民家。中山さんの趣味が高じて作った施設ですがこれは一体…?

中山煌雲さん:
「おー、いったいった」

(ドローン目線映像)

小型無人機、ドローンのレース場です。
いまや世界各地でタイムを競う大会が行われるほど人気です。

「よー、いけるか、いけるか、あー、これいけねえ」

中山さんは菅笠を使った農業の様子を撮影し、発信するためドローンを始めたといいます。

中山煌雲さん:
「ドローンとかかわるうちにドローンレースがあると知って。レースを通じて伝統工芸をPRできるんじゃないかと考えたのが、空き家を使ったドローンレース場のきっかけ。昔からのものとドローン、最新のものを掛け合わせることでものすごく面白い、相乗効果とか化学変化とかが起きるんじゃないかな」

高岡市勝木原(のでわら)ののどかな田園風景の中にある一軒の古民家。地元高岡の伝統工芸を後世へと残していくため、時代の最先端を走るドローンの力を借りることに。レース場も伝統工芸を飾るにふさわしい日本家屋を選び準備を進めてきました。

監修は日本のトップドローンレーサー白石麻衣(しらいし・まい)さんです。見た目は奇抜ですが難易度の高い本格的なコースになったといいます。空き家をまるごと1軒改装してつくったドローン施設。「フライトベース富山」です。

それでは、自慢のコースを中山さんに紹介してもらいましょう。

中山煌雲さん:
「菅笠用にうちの田んぼで栽培した菅をそのままゲートに使いました。これがこの施設の顔になるゲートかなと思っています」

スタート直後にドローンがくぐるのは菅でつくったゲートその名も「スゲート」。

中山煌雲さん:
「地元高岡の漆器と銅器をオブジェに使った部屋になります。伝統工ゲートです」

こちらの部屋は…。

中山煌雲さん:
「あ、ここ電気ないんですよ」

七色に光るフープ。その横には押入れに仕舞ってあったという日本人形が。

中山煌雲さん:
「外国の方に来ていただいて、これが日本の着物や日本の文化をお伝えできたら」

そしてドローンを飛ばした人しか見ることができないこんなコースも。

中山煌雲さん:
「名づけてドローン神社ということで、ちょっと隠れスポットとして皆さんがドローンを使って参拝してもらえたらいいなと思っています」

中山さんの熱い思いが詰まったレース場。8月21日にプレオープンを迎えました。

実際に体験した人は―。

NANKOTSUさん:
「ドローンってずっと目で見続けているので、常に伝統工芸品とかを見続けられるっていうところではいいPRになるんじゃないかなと思います」

NANKOTSUさんの弟子 こうたくん(12):
「最初の菅のゲートが1番印象に残った。いろんな伝統工芸の品があってやったことないゲートとかがあるから、難しいし楽しいなと思いました」

中山さんのいまの目標はこの場所でレース大会を開催することです。

中山煌雲さん:
「お客さんが(ドローンを)飛ばされていよいよコースが出来上がったんだなっていう気持ちと、このコース面白いって言っていただけたのがすごく報われたなと思っています。世界からこの施設にドローンを飛ばしに来て、日本の文化も味わってもらえるような場所になったらいいなと思っております」

現状に満足せず独自の視点で伝統工芸を発信。新しい挑戦が飛び立ちました。