生活は苦しかった一方で、人の表情を温かく切り取る兼七さんの作風は、若手の写真家に大きな影響を与えていました。
沖縄市でフォトスタジオを運営する中川大祐さん。コザの町を背景にしたウェディングフォトなどを撮影しています。
中川さんも、兼七さんの写真に魅せられた1人です。

中川大祐さん
「なにかどこか誰かを意識していい写真を撮ろうっていう、そういう嘘を平敷さんはことごとく見抜いていくんですよ。饒舌な方ではないので平敷さん自体が。残された写真集を見ていくと、そういったメッセージが強く出ているんですね」
2009年、肺炎のため61歳の若さで亡くなった兼七さん。父の死後、七海さんはこのギャラリーをオープンすることにしました。
平敷七海さん
「亡くなって6年たったあとにギャラリーをオープンしたから、平敷兼七、忘れられていくなと思ったから、これやんなきゃいけないねっていうのが決めでしたね」

幼いころの父に、あまり良い印象を持っていなかった七海さんですが、ギャラリーのオープンをきっかけに、”これまでとは違う父の姿”が見えてきました。
平敷七海さん
「普通、人が亡くなったら、もういいやって訪ねてくる人いなくなるじゃないですか。写真を飾っているとそこに平敷さんにこういう風にやってもらったとか、思いをまだもっている方が訪ねてくるから、それを私に教えてくれたりするから、身近な人、大事にしていたんだなと思って」

父の作品を紹介するためにオープンしたギャラリーですが、地域の憩いの場としても成長しています。

写真家・永山直樹さん
「七海さんの人柄に惹かれて色んなアーティストがくるので、いろんなジャンルのアーティストの交流が行われて、良い意味でアートのるつぼな面がこの平敷兼七ギャラリーのいいところ」
画家・井上淳三さん
「居心地がいい。変なのばっか来る。変わった人ばっか来るからな嫌になってくる(お前もだよ、あんたも)」
人々が集う美容室と、亡き父の思い出が詰まったギャラリー。こんな場所にしていきたいと、七海さんは考えています。
平敷七海さん
「引きこもりできた学生がいたので去年。よくここに来て和が広がって画家になっちゃった子もいるので。そういう人たちがちょっとでもアートをきっかけ人とのコミュニケーションができる場になってほしいなと思いますね」
浦添市の美容室を訪ねてみると、亡き父が残した写真をきっかけに、地域の人々が集う、心地よい空間がありました。
<記者MEMO>
VTRの中でギャラリーに来たことがきっかけで画家になった学生の話がありましたが、現在高校2年生の仲里悠咲さんです。

それまで絵に興味はなかったんですが、平敷兼七ギャラリーを訪れたことがきっかけで画家の先輩たちと交流することが増え、自分でも絵を描くようになり、最近では絵画展を開くほどになりました。
展示されている写真も魅力的なものばかりなんですがギャラリーにあつまる人も個性的な人が多いので、みなさんもぜひ、足を運んでみてください。
(取材:宮城恵介)