「メンタルも技術」。難しさが面白い

――空手家としてやってきて、心持ちがどんなふうに変わったんですか。

清水希容氏:
私はそんなにメンタルが強いタイプでもなくて、空手を通していろんな経験をさせてもらって、自分の気持ちの整え方をどうしたらいいのか、いろんな方法を試してきたからこそ、今の自分や考え方があります。空手をやっていなかったら、こういうメンタルの持ち方はなかっただろうなと思います。

今までだったらメンタルが弱い自分のことを否定していたんですけど、メンタルが弱いからといって否定すること自体がそもそもよくないんだなっていうことに気づいたり、気持ちの面とかも空手で養っていくことができたなって思っているので、空手は私から離すことはできないです。

――気持ちと強さが両方で歩んでいったという感じですか。

清水希容氏:

頑張って気持ちを引っ張ってきたっていう感じです。どちらかっていうと調子が悪かったり、自分のパフォーマンスの準備がちゃんとできていなかったら人前に立ちたくないタイプなので、人に見られるのが嫌だってなってしまうんです。その自分とどうやって向き合わないといけないかも考えてきました。誰だって今日は何かうまくいかないとか、ちょっと人前に立ちたくない、話したくないとかってあると思うんですけどでも、そうできないときって絶対何かしらあったりすると思うんです。

だから、今の自分を否定しないことが何より大事だっていうことに気がついたというか、どんな自分も自分であって、今ある自分の最大のベストを出すためにどうしたらいいのかを考えることが、一番大事なんだろうなっていうことに気がつきましたし、空手を通して知ることができたなっていう感じです。

――自分を見つめるということでしょうか。

清水希容氏:

自分と向き合うっていうことは絶対に常にしないといけないと思いますし、ちゃんと向き合えていない状況で人と触れ合うのはよくないと思うので、ちゃんと自分をコントロールできるようになるのも、自分の技術、メンタルも技術だと思うので、技術の部分をちゃんと高めていけるようにすることが大事かなと思います。

――空手のどんなところに魅力を感じていますか。

清水希容氏:
空手はスポーツじゃなくて武道なので、作った先代の先生たちがどういうことを考えて、どういう風景、どういう場所で何を思って空手を作ったんだろうということを読み解いていって、先生はどうやってそれを考えて作ったんだろう、なんでこういう構成にしたんだろうっていうのを考えていくのが面白い。

子どもの頃はそんなことはなかったです。シンプルに形ができて楽しい、きれいにできてうれしいみたいな感じだったんですけど、年齢を重ねるごとに歴史の深さや攻防の深さを表現していく。守っていかないといけない形がある中で、自分をいかに表現できるか。崩しすぎても駄目だし、ちゃんと形がありながら、自分をどこまで突出できるかみたいな難しさが面白いなって思っています。変えることは簡単なんですけど、変化をさせない中で、いかに自分を磨くかっていうのがすごく面白いなと思います。

――風景というお話がありました。スタジアムや競技場ではない場所から生まれているということですね。

清水希容氏:

本当にまさしくそうで、昔はしゃがんで相手を月光で見て、陰で戦うとか、今じゃ考えられないじゃないですか。でも、その時代だからこそ生まれた技なんだなっていうのを考えると、先代がずっと繋いできてくれた生きた歴史をちゃんと守りながら自分で読み解きながら、それを後世に伝えていくっていう役割というか。生涯をかけても、空手の技術は全部が全部取り込めるわけでもないですし、やることが多すぎて、間に合わないみたいな感じです。

――ちょっと基本的なことを。どれぐらい練習するんですか。

清水希容氏:

長いときで(1日)12時間とか。道場に着いてそのまま練習して12、3時間やっていました。直したいことが強すぎて、できなかったらできるまでやりたいし、できなかったら帰りたくないっていうタイプなんで、何をするにも人よりも時間がかかるんです。例えば縄跳び飛ぶにもリズム感がないんで、自分は時間がかかるんです。人がすぐできることが1週間かかるようなタイプなんです。

時間をかけないと落とし込めない。でも、時間をかけたからこそ自分のものになるって思っているんで、すごく時間をかけて、それが自分のものになるまでやり続けるっていうことをずっとやっていました。

――演武をしている姿と、縄跳びが飛べない姿に落差を感じます。

清水希容氏:
努力できるタイプであるかもしれないです。もうこのぐらいでいいかなって思うところを「いや、まだ」って言ってやってきたタイプではあるので、その積み重ねがたまたまオリンピックに行けたっていうだけで、私は昔先生とかに「才能がないタイプ」って言われていたので。練習も好きで空手も好きで、シンプルに空手の形が上手くなりたいって思ってやっていたので、それが積み重なって今があると思うんです。

本当に普通の子だったんです。特別なことは一切なくて、シンプルにずっと努力ができたというか、そこに打ち込むことができた。空手だったからできたんです。これが違う競技だったらできていないです。たまたまそれがマッチしたからできていた。

――清水さんはどこへ向かっていくんでしょうか。

清水希容氏:

自分の理想をいつかは越えたいっていうのと、現役のころに自分が完璧だったっていう形が一度も打てなかったので、生涯のうちに一度でいいので、自分がすべての技がよかったなって言える演武をしたいなって思っているので、そこは求めていきたいなと思っています。

――1回もないんですか。清水さん、90歳になっても、まだ駄目だって言っていますよ。

清水希容氏:

絶対言っています。でも、それが自分なんだなとも思うので、求めるところまで求め続けて。納得は多分いかないと思うんですけど、求めていること自体が自分らしいんだろうなっていうところです。

(BS-TBS「Style2030賢者が映す未来」2024年8月18日放送より)