同性カップルの住民票の《続柄欄》に、本人達の希望を受け「世帯主」「夫(未届)」と記載して交付した長崎県大村市に対し、総務省が「実務上の問題がある」とする見解を示しました。
一方で総務省は「国の見解を踏まえた上で、大村市が判断するものと考える」ともしており、当事者からは「何が言いたいのかよく分からない」「取り消し」を行うよう市に忖度を求める文言だとする声が上がっています。
7月9日に行われた大村市と、同性カップル当事者たちの会見です。

長崎県大村市 園田市長:
「7月8日に住民票記載に関する総務省からの回答及び見解が届いた。結論として大村市としては現時点において記載に関する内容を修正することはしない。
市のパートナーシップ宣誓制度を導入されている方が、住民票の記載を「夫(未届)」という形にしたいと希望したことを受け、現場で色んなものを読み解き「できる」と判断した。自治事務の裁量の範囲内で住民に寄り添った対応をした事務処理だと認識している」

園田市長は「今回の対応が《妥当であるか・ないか》総務省は明確に回答していないと受け止めているとしたほか、問題があるとする根拠が不明と指摘しました。
園田市長:
「住民票の欄に「夫(未届)と記載することを「妥当ではない」と判断する根拠がない。「妥当ではない」と判断するのであれば住民基本台帳事務処理要領の改正が必要ではないか。今のままでは根拠がないため修正の判断はできない。
総務省が見解を変えて事務処理要領を見直したのであれば、その時点で協議をしなければいけないと思う。そういったことを国が進めていくのかも一つの論点になると思う」

大村市によると、今回の見解が出されるまでの間、総務省とは計9回やり取りし、その中で市は判断に至った考えや根拠を説明してきました。しかし国から「どう対応すべきだったのか」示されることはなく「国の見解を踏まえた上で、大村市が判断するものと考える」と電話で伝えられたということです。

市長は「ほかの市民、そして全国の自治体にも及ぶ話」として国に疑問点を再質問する考えを示しています。
園田市長:
「同性カップルの住民票「続柄」の記載について、大村市と同様の対応をとる考えを示している自治体は今の時点でも全国に複数ある。
総務省の見解は大村市だけではなく全国の自治事務に関わる。
判断の根拠について、総務省が考えを示さなければ現場としての自治事務が、非常に混乱するのではないかと考えている」

大村市から「夫(未届)」の住民票を受け取った2人も、9日に大村市役所で会見を開きました。

松浦慶太さん(39):
「回答が来るまでの1~2か月は住民票の続柄が取り消されるのではないかずっと不安な思いで過ごした。
今回の回答は内容的には、嬉しくない内容でがっかりし残念だと感じている一方、率直に何が言いたいのかよく分からないと感じている。「取り消せ」とはいってないが、「取り消せ」と促すような圧力、市に対し忖度しろという様な文言だったのではないかと思う。
今回示された総務省の見解で他の自治体も萎縮するのではないかと危険を感じている」
「一方でLGBTQの平等は、全国的に認められていく流れになっていると思う。大村市は「取り消さない」と力強く言ってくれた。総務省からの圧力にも屈しない姿勢を全面的に出してくれていることに大変感謝している」
「大村市に移住してきて、パートナーの家族や親戚ともとても仲良く過ごしていて、幸せを感じている。しかし今回の件で対応に追われて仕事にも支障が出てきている。ただただ穏やかに生活したり、仕事に専念したいだけ。それを、認めてくれたらと思っている」

藤山裕太郎さん(39):
「市が一緒に戦ってくれることが励みになるし嬉しかった。同じ人間として平等に対応してもらいたい。この1~2週間は慌ただしい日々を過ごしていて、気持ちも穏やかでない感じだった。静かに過ごしたいと思っている」