(防災無線)「指定避難所へ移動してください」

マサヨさんの「支援者」になっている戸津新介さん(65)。マサヨさんの家の隣に住んでいます。避難を呼びかける訓練の放送が聞こえると、すぐに外に出ていきました。

「戸津さんが連れていくげな」
マサヨさんの息子と2人がかりでマサヨさんを車に乗せ、避難所へと向かいます。

約10分後、避難所に到着。受付を済ませて避難は完了です。
要支援者 吐合マサヨさん(94)「お世話になりましたっていう(気持ちで)いっぱいですなあ」

―ー息子さん一人だと母親を支えるのに不安な部分も?
吐合さんの息子・清敏さん「不安があるからですね。来てもらえるというのは良いことだと思います」
支援者も避難する時のイメージがわき、役割を自覚したようです。

マサヨさんの支援者 戸津新介さん「とにかく自分の体が動く限りは“人の命を守るために動かなければならない”という使命を感じました」
一方で、自分も危険な状況に巻き込まれるおそれがある場合、どこまで支援できるのか。支援者の胸の内には不安や迷いもあります。

戸津さん「外に出ていいものなのか、という心配がある。いざという時には」
「僕が動けなくなったら被害が広がる」集落唯一の20代

車いすを押すのは、集落で唯一の20代という浅葉広明さんです。浅葉さんは1年半前に神奈川県から球磨村の松谷地区に移住。
地域おこし協力隊としてジビエの活用に取り組んでいます。

「この人が居なかったらこのジビエは潰れてしまうで」
村でもすっかり頼られる存在です。

浅葉広明さん(26)「普段から助けてもらってるので、そういうとき(緊急時)には少しでも恩返しできればと考えています。身の安全を優先するというのが第一だと思うんですけど、僕が動けなくなったらさらに被害が広がる可能性もあるので、そこはもう…難しいですね」
その時、自分はどうするか――「明確な答えのない問い」にどう応えるべきなのでしょうか?

球磨村 中渡 防災管理官「改めて絆が強い村だと良く分かりました。気になったのが、“使命”や“自分が行かなければ”という言葉。素晴らしいことだけれども、どこかで自分の身の安全を守ることを優先してほしい。自分の身を守ることが周りの身を守ることにつながる」