電気・ガス代が、実質所得プラスの足かせに
電気代の値上げは、家計を直撃します。月1500円の値上がり(東電)なら1年で1万8000円、月2500円(関電)なら年3万円です。
これに同じく補助金が全廃されるガス代の値上げも加わります。
政府は6月から1人あたり所得税3万円、住民税1万円、計4万円の定額減税を実施しますが、何のことはない、電気とガスの値上げで、減税分の相当な部分が帳消しになります。
また電気やガスを多く使用する中小企業にとっては、大きなコストアップになり、来年の賃上げどころではなくなるリスクもあるでしょう。
多くのエコノミストは、7月以降、電気・ガス代の値上げで、消費者物価指数は1ポイント以上引き上げられると見ています。実はこの1ポイントが大きいのです。
ざっくり言って春闘でのベースアップ部分は連合集計で3%台です。
一方で日銀が目標とする物価上昇勝率は2%ですから、ベアが3%あって、初めて実質賃金が1%のプラスになるわけです。
これに電気代の値上げの1%が乗っかれば、ベアが3%問恵まれた人でも実質賃金はプラスになりません。ベアが3%に満たない人の実質賃金は言うに及びません。
岸田総理の最側近も電気・ガス代の補助再開を示唆
コトの重大さを認識したのか、岸田総理大臣の数少ない政策ブレーンで最側近とされる自民党の木原誠二幹事長代理は、26日にフジテレビに出演した際に、電気ガスの補助金について、「いったんやめると決めたが、政府は、状況が変われば臨機応変にと言っており、しっかり見て対応を考えたい」と述べました。
夏以降に物価対策として電気代ガス代への対策を改めて打ち出したいように見えます。
だったら、この一番大事な時期に、なんでやらないんだよ、と突っ込みたくなります。
「2024年中に物価高を上回る所得を実現する」というのは、岸田総理の公約です。
そのために手間のかかる定額減税まで実施します。そして、減税による消費を促そうと、給与明細に減税額を明記することまで、企業に義務づけたのです。なんというちぐはぐな対応でしょう。
そう言えば、電気代の請求書にも政府による補助額を明記させていました。7月の電気代請求書には、果たして、補助打ち切りでいくら上がったのか、明記されるでしょうか。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)