疎開先の岡山で出会った初恋の人「どんな人生を送ったのか…」

ー恋愛すると、音楽にもきっといい影響があるんでしょうね

(フジコさん)
「『恋をしたことがない』という日本人に、ストックホルムで会ったことがあるけど、『恋ってどんなんだろう』っていうから『かわいそうな人』って思った」

「私の場合は悪趣味で、恋愛相手はみんな嘘つきの女たらしばかりだった。『なんでこんなのばかり好きになるのか』って。嘘つきで酷い奴のほうが魅力あるのよね。人が好い男性は、どうも退屈で。誰かを好きになる時の感情って素晴らしいじゃない。お酒よりももっとおいしい。うっとりしちゃう」

(フジコさん)
「私、戦争中に岡山に疎開したの。日本の兵隊がたくさん小学校に駐屯していた。その中の一人が私の初恋の人なのよ。私よりずっと年上だったからもう亡くなったらしいですけど。ぷっくりした日本人よ。笑ったことは一度もなかったわ。いつも憂鬱そうな悲しい顔をしていた」

「一回だけ彼がしゃべった言葉は、『きょうはピアノを弾かないんですか』って私に。廊下でお会いしたときに。私は一言も彼にしゃべらなかった。それで終わっちゃったんです。終戦になって行ってしまったから。だから、その人がどういう人生を送ったのか、それだけでも知りたいと思って」

取材班が控室をでるとき、笑顔で見送ってフジコさん。筆者がそのとき着ていたブラウスを「素敵ね。真珠の色だわ」と褒めてくださいました。

世界中に素晴らしい音楽を届けてくれたフジコさんのご冥福を、心よりお祈り申し上げます。