シリーズ「つなぐ、つながる」です。近い将来の発生が心配される南海トラフ地震に備えて、国は「臨時情報」という特殊な情報を準備していますが、その存在や意味が国民にほとんど伝わっていないのが実状です。
安倍晋三総理(2007年当時 訓練)
「気象庁長官から『2、3日以内に東海地震が発生するおそれがある』との報告を受けました」
国は平成まで、南海トラフ地震の一つである「東海地震」の発生を、直前に予知できるとの前提で防災対策を講じてきました。
その名残で「地震予知」の名前の付いた部署が気象庁にも、かつて存在しました。
ところが、国は2017年、方針を180度転換します。
東京大学地震研究所 平田直 教授(2017年当時)
「現在の科学の実力では『3日後に確実に地震が起きる』とは言えない」
国は、南海トラフ地震の防災対応を「確度の高い地震予知はできない」との前提で進めていくことを決めたのです。
そこで新たに誕生したのが「南海トラフ地震臨時情報」です。
この情報は、南海トラフ沿いでマグニチュード7程度以上の地震や、通常とは異なる地殻変動が観測された場合に発表されます。
そして、巨大地震の発生する可能性が高まったと判断されれば、その切迫度に応じて「注意」か「警戒」が発表されます。
日常の活動を維持することを基本としつつ「巨大地震警戒」が発表された場合は、一部のエリアにおよそ1週間、事前の避難が呼びかけられる可能性があります。
臨時情報が現在の仕組みになって、まもなく5年が経ちますが…
関西大学社会安全学部 林能成 教授
「(臨時情報を)知らない人が多過ぎる。全然、情報の普及啓発・広報が進んでいないことが一番の問題」
内閣府が今年度実施した住民アンケートによると、「臨時情報」について▼「聞いたことがない」と答えた人が35.8%と最も多かった一方、▼「知っている」と答えた人は3割を切りました。
静岡・島田市(2019年 訓練)
「今から1週間以内に南海トラフ地震が発生するおそれが高まっています」
林能成 教授
「これ、誰が聞いても、地震予知の情報のように聞こえますよね」
巨大地震が1週間以内に発生する頻度は「巨大地震注意」で数百回に1回、「巨大地震警戒」で十数回に1回とされます。
統計的に、地震の発生可能性が普段より高まっていることが言えたとしても、確率としては低いことを併せて伝える必要があると林教授は指摘します。
林能成 教授
「地震はいつ起きるかわからないが、普段よりは少し起きやすくなっている情報だと、相当丁寧に説明しないと、どう聞いても地震予知と聞こえてしまう」
まだ一度も発表されたことのない南海トラフ地震臨時情報。
第1号が発表された時、私たちは情報の真意を理解して適切な行動をとれるでしょうか。
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