【障害と難病について】

村中さんは生後まもなく病院から検査を勧められました。

母 村中雪子さん:「その時に言われたのが身体的にも精神的にも検査していかなきゃいけないって」「身体的にも精神的にもってどういう意味やろと思って、何かちょっとガーンと来て」「抱っこしたら涙が出てきてて」

検査の結果、知的障害と「マルファン症候群」という難病だとわかりました。

マルファン症候群は、およそ5000人に1人が発症する遺伝子の病気で、体の結合組織がもろくなり、背骨の歪みなどの骨格の異常や大動脈解離などを引き起こす恐れもあります。

村中さんは、現在、富山型デイサービスに通い、赤ちゃんから障害のある人までいつも大勢の人たちに囲まれてのんびりと過ごしています。

父 村中大治さん:「精神年齢5歳、
実年齢38歳、肉体年齢70歳みたいな、そんな感じだと思う」

母 村中雪子さん:「あー帰ってきた。おかえりなさい、ただいまって」

背が高く、細く長い指もマルファン症候群の特徴です。

母 雪子さん:「ここのとこがすごい漏斗胸で」「こうきて、こうでこうして曲がって」

記者:「最近は体調はどうですか」

村中洋介さん:「大丈夫やよ。大丈夫ですよ、大丈夫にしとかんにゃ」

選手たち:「がんばるぞー、おー」

高岡養護学校の高等部からフロアホッケーを始め、元気に走り回っていた村中さん。

厳しい練習を乗り越えて、知的障害者のあるアスリートたちのスポーツの祭典、「スペシャルオリンピックス」に出場した経験もあります。

伝説の「フリーバード」が誕生したのもこの頃です。

母 村中雪子さん:「今思い出しとったら、フリーバード描く時も、いきなり洋君がびーびーとかって線描いてるんですよ」「『こんな線描いて、(米田)先生これダメだよね』って私が叫んだら『ああ洋ちゃん、これはいい線だね』とか言って」

ある日突然舞い降りた「フリーバード」をきっかけに、村中さんはおよそ4年間で30点ほどの作品を描き上げました。

しかしー

母 村中雪子さん:「段々体が痛くなってきて、集中力とかもなくなってきて、そしたら辛いのが全部私とお父さんの方に向いてきて、『ちょっと待って』とか言うでしょ。そしたら、もういきなりガーとかそこらへんの物を投げたりとかして」

母 雪子さん:「大変でかわいそうながやけどね」

村中洋介さん:「かわいそうじゃないよ」

母 雪子さん:「かわいそうじゃないね、はいはい」

村中洋介さん:「かわいそうじゃないと思うよ」

母 雪子さん:「かわいそうじゃないね、かわいそうじゃないと思うよ」

今は絵を描いていませんが、村中さんの自由な感性がそのまま表現された作品は、今も数々の展覧会で、障害のあるなしを超えてアートの面白さを伝えています。

米田昌功さん:「いろんな作品を見てきてるんだけど、やっぱり普遍的な強さがあるんですよ。この作品。いつ見てもいいんですよ。色褪せしないというか」

3月9日からは富山市で村中さんの全作品を集めた展覧会が開かれます。

村中洋介さん:「涙出るわ、(泣く)涙出る、涙出る」

母 雪子さん:「涙が出るの?なんで?」

村中洋介さん:「(チラシを指さして)これやもん」

母 村中雪子さん:「本当に洋君のことを応援してくれる人に出会えてラッキー。優しい人たちに恵まれてラッキー、本当にラッキーラッキーラッキーって感じで」

あの日舞い降りた「フリーバード」は、村中さんと家族に何度も元気を与えてくれます。

母 村中雪子さん:「もう一回描いてみようかなとか思わんけ?」

村中洋介さん:「うん」

母 村中雪子さん:「思う?」

村中洋介さん:「ご想像にまかせるわ」