米国とイランは19日にスイスで暫定和平合意に正式署名する準備を進めており、双方が勝利を主張している。ただ、合意内容の詳細はなお明らかになりつつある段階で、エネルギー業界関係者の間では、ホルムズ海峡の通航がどれほど速やかに再開されるかについて懐疑的な見方も出ている。

覚書の内容はまだ公表されていない。同文書はイランの核開発計画などを巡る2カ月間の交渉へ道を開くものだ。ブルームバーグ・ニュースが確認した最終案に近い草案によると、イランは直ちに原油販売を可能にする制裁の適用除外措置を受ける一方、その他の経済的な見返りは後日に先送りされる見通しだ。

米政府高官によると、MOUは今後2日以内に公表される可能性がある。米国代表団はバンス副大統領が率いるとみられており、イラン側はガリバフ国会議長が代表を務める見通しだ。スイス外務省によれば、署名式典はスイス中部の山岳リゾート、ビュルゲンシュトックで行われる。

合意は「決着済み」

トランプ米大統領はフランスで開かれている主要7カ国(G7)首脳会議で、この合意は「決着済み」であり、イランの核兵器開発を阻止するものだと述べた。その上で、米国はイランに資金を投じず、戦争賠償金も支払わないと強調した。

トランプ米大統領(6月15日、G7サミットが行われている仏エビアンで)

トランプ氏は16日、G7会議に合わせてアラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド大統領およびカタールのタミム首長と会談した。両国は紛争終結後、米国とともにイラン向けの3000億ドル(約48兆1100億円)規模の開発基金創設を支援する可能性がある。

イラン当局者は、このMOUによってカタールなどで凍結されている数百億ドル規模の資金へのアクセスが可能になると主張している。これに対し、トランプ政権は、合意署名時点では凍結資産の解除や制裁緩和は行わず、イランによる合意履行を条件に段階的に実施すると説明している。

欧州各国政府やエネルギー投資家、海運会社の多くは、ホルムズ海峡が19日までに全面再開するとのトランプ大統領の主張に懐疑的だ。航路上の障害物除去に加え、イランが船舶の自由な航行を認めるかどうかも不透明なためだ。

イランは、新たな米・イランの60日間の交渉期間が終了した後、船舶に通航料を課す意向を示している。一方、トランプ氏は、UAE首脳との会談で、ホルムズ海峡は「恒久的に」無料で開放されると述べている。

イスラエルの反発

レバノンでの親イラン派武装組織ヒズボラとイスラエルの戦闘も合意成立を脅かす要因となっている。MOUには、レバノンを含む「すべての戦線」で停戦が必要だと明記される見通しで、イスラエル側は反発している。

イスラエルの政治家らは、イランを支援する形で自国領内にミサイルやドローンを発射してきたヒズボラとの戦闘継続が必要だと考えているためだ。

イスラエルのネタニヤフ首相は、この合意を巡って国内で批判を受けている。国民の間では、この合意がイランに過度に譲歩しているうえ、同国の弾道ミサイル計画を十分に制限していないとの見方が広がっている。

カタールとパキスタンが仲介した米・イラン協議において、ネタニヤフ首相に直接の発言権はなかった。協議の進展に伴い、同首相とトランプ米大統領との関係も大きく緊張している。

トランプ氏はG7会合で、イスラエルによるヒズボラへの対応を批判し、レバノンでの紛争がイランとの協議の妨げになっているとの認識を再び示した。

同氏は「イスラエルにヒズボラへの対応はシリアに任せるよう提案した」と述べ、 「イスラエルのレバノンやヒズボラへの対応に満足していない。もっと早く片付けることができたはずだ。事態がいつまでも続けば、大きな合意、つまりイランとの合意に悪影響を及ぼす」と話した。

米国とイランは14日、ホルムズ海峡の通航再開に向けた暫定合意を発表した。これにより、数千人の死者を出した戦争は停止し、イランの核開発計画の行方を巡る60日間の交渉に向けた道筋が整った。

原題:US, Iran Prepare for Deal Signing as Financial Details Emerge(抜粋)

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