かつては鼻を細くしたり高くしたりすると一目で分かり、うわさの的にもなった。だが最近の施術は、周囲に気付かれにくいのが特徴だ。

医師によると、鼻先に焦点を絞ったり、正面からの見た目を変えずにボリュームを抑えたりする、控えめな美容整形を選ぶ人が増えている。ジェル状の物質を鼻に注入するフィラーも用いられ、鼻のこぶを目立たなくしたり、鼻先の形を整えたりしている。

こうした患者の多くは40代以上で、顔全体と同様に鼻も加齢していると自覚しているのだという。垂れ下がりや横への広がり、肥大した鼻先を改善するために、さりげない調整を求めている。一方で、大がかりな手術や、それに伴う周囲の詮索は避けたいと考えている。

ロサンゼルスの顔面形成外科医で、米顔面形成再建外科学会(AAFPRS)の次期会長に就任予定のババク・アジザデ氏は、患者たちは「職場に戻った途端に『どこで鼻を手術したの』と聞かれたくない」と説明する。

米形成外科学会(ASPS)によると、鼻の形を整えるライノプラスティー(鼻形成術)は、顔の美容施術の中でも依然として人気が高く、これを上回る需要があるのはまぶたの手術とフェースリフトのみだ。

ASPSの会員は2024年に約4万8423件の鼻形成術を実施した。19年の3万2484件から増加した。24年にはヒアルロン酸フィラーを顔に注入する施術が530万件超行われた。

鼻へのフィラー注入は「リキッドライノプラスティー」とも呼ばれるが、最新データでは独立した項目としては集計されていない。

米食品医薬品局(FDA)は鼻へのフィラー使用を承認しておらず、適応外使用とされる。それでも市場は拡大している。

ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院の美容外科部門ディレクター、アイヴォナ・パーセック氏は、施術へのアクセスが広がったことや、費用が本格的な手術より数千ドル安いことがその背景だと指摘する。

フィラー注入を提供するメディカルスパでは、ソーシャルメディアの影響で関心が高まっているという。短時間の施術後に掲載される横顔のビフォー・アフター写真は、多くの「いいね」を集める。

フィラー施術は医師以外の有資格医療従事者、例えばナースプラクティショナー(診療看護師)や正看護師が行うことも多い。そのため費用が抑えられ、利用しやすい一方、規制は比較的緩やかだ。

鼻形成術を含む美容整形は、新型コロナウイルス流行後の数年間で急増したとアジザデ氏は言う。ビデオ通話で自分の顔を見る機会が増えたことが一因だという。現在では、美容整形を高級ハンドバッグのようなステータスシンボルと見なす患者もいるという。

スマートフォンのカメラは鼻を実際より広く、あるいは長くゆがめて写す傾向もある。「以前から自分の鼻が好きではなかった人たちが、いまは来院するようになっている」とパーセック氏は話す。「さりげなさが大きなポイントだ」という。

リスクの説明

外科手術で鼻の形を変える場合、当初の回復に数週間を要する。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デービッド・ゲフィン医学部の臨床教授ジェイソン・ルースタイアン氏によると、ここ5年でより簡便な方法を試す患者が増えた。

超音波技術を用いて、より精密に振動する骨切り器具を使う新しい選択肢もある。鼻筋などを微調整するためにフィラーを用いるケースもあり、効果は約1年持続する。「やり過ぎた美容整形は否定的な印象とともに記憶される」と同氏は言う。

アジザデ氏は、いわゆるノーズリフト、あるいは「ティップライノプラスティー」と呼ぶ施術も提供し始めた。

鼻のこぶには手を付けず、前方の軟骨部分に照準を当てる手法だ。以前は全く新しい鼻を求める若年層が多かったが、最近はダウンタイム(回復期間)短縮を望む高齢層が増えているという。「皮膚は老化し、鼻は垂れ下がってくる」と同氏は語る。

ニューヨークの顔面形成外科医ショーン・アレミ氏は、フェースリフトと同時に、「フィネスライノプラスティー」と呼ばれる小規模な鼻の微調整を選ぶ患者が現在では約15%に上ると見積もる。

回復期間には影響せず、手術室の費用も抑えられる。フェースリフト時に鼻先の軽微な手術を行う患者数は、24年以降に倍増した。「30代や40代のころの写真を見ながら、もともとの鼻を再現している」と同氏は述べる。

シカゴの顔面形成外科医スティーブン・ダヤン氏は、まず鼻へのフィラー注入に伴う合併症について患者に説明することから始める。

まれではあるが、失明や皮膚壊死(えし)につながる可能性があることを示す研究もあるという。繰り返し注入すれば鼻の皮膚が薄くなり、瘢痕組織の形成などの合併症を招き、手術が難しくなる恐れもある。

それでも多くの患者は、スピーディーかつ安価なフィラーを選ぶとダヤン氏は明らかにした。同氏のクリニックでは現在、手術と注入の割合はほぼ半々だが、「リスクを患者に説明せずに行っている人があまりに多い」という。

原題:Middle-Aged Patients Fuel Growing Demand for Subtle Nose Jobs(抜粋)

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