8月7日、トランプ大統領は自身のSNSにおいて、8日退任のクグラー理事の後任に大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長を充てる人事を公表した。

ミラン氏は2026年1月末(空席となる理事の任期)までの一時的な就任であり、トランプ大統領は次期FRB議長候補ともなりうる新たな理事の検討を継続するとしている。

事前の報道ではハセット国家経済会議(NEC)委員長やウォーシュFRB元理事が理事候補として挙がっていた。

これらの候補は、2026年5月に退任するパウエル議長の後任として、将来的な金融政策の方向性を示す「影の議長」として働くとの見方が金融市場の一部にあったが、結果的には候補として注目されていなかったミラン氏が指名された。

また、7日付けのブルームバーグ通信は、トランプ政権関係者がウォラー理事を次期FRB議長の最有力候補に考えていると報じた。

今後、ミラン氏はFRB理事として上院の承認手続き(銀行委員会での公聴会や本会議での採決)に進むとみられる。

上院は8月が休会中で9月に再開されるため、通常の承認スピードを前提にすると、9月FOMC(9/16~17)までに同氏が理事へ就任するハードルは高い。

また、同氏は去年時点において、FRBとホワイトハウスの間で「回転ドア」のような人事異動がみられることを批判しており、上院民主党はこうした主張と今回の指名の矛盾点を追及し、同氏の採決を遅らせようと遅延戦略を取る可能性がある。

一方、3月にミラン氏は53対46の賛成多数でCEA委員長に承認されており、上院共和党の協力は得やすいとみられる。

同氏がどのタイミングで就任するかは依然不透明であるが(10月FOMCは10/28~29開催)、就任後はトランプ大統領の意向を踏まえて継続的な利下げを主張する可能性が高い。

7月FOMCにおいてパウエル議長は9月FOMCの利下げに関する明確なヒントを示さず、引き続きデータ次第の姿勢を示した。

一方、その後の7月雇用統計の過去実績の下方修正を受けて、6日にはクック理事が労働市場への懸念を強調するなど、利下げに傾きつつあるFOMCメンバーは徐々に増えているように見受けられる。

とはいえ、9月FOMCまでには2回のCPI統計と1回の雇用統計の公表を控えており、利下げに向けては「関税によるインフレが抑制的に留まるのか」及び「雇用市場の減速傾向がより明確となるのか」の2点が引き続き焦点となろう。

(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 前田 和馬)

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