(ブルームバーグ):欧州安定メカニズム(ESM)のグラメーニャ事務局長は10日、トランプ米政権の暗号資産(仮想通貨)支援で、欧州金融の「主権」が損なわれる恐れがあるとの考えを示した。
グラメーニャ氏はブリュッセルで記者団に対し、「トランプ政権はドルを裏付けとするステーブルコインを中心とする暗号資産に好意的で、それが欧州の懸念を招く可能性がある」と述べた。
トランプ大統領は先週、「ビットコイン戦略備蓄」と、その他トークンから成る「デジタル資産備蓄」を創設する大統領令に署名。いずれも訴訟手続きの一環として没収された暗号通貨が含まれることになるとしている。

一方、ビットコインを準備金に加える考えを否定している欧州中央銀行(ECB)は、2021年からデジタルユーロの開発を進めており、導入するかどうかを巡り年内に最終決定を下す予定。
グラメーニャ氏は、米国のデジタル通貨に対する姿勢の変化で、「米国内外の大手テクノロジー企業はドル建てステーブルコインに基づく大規模な決済ソリューションを打ち出す計画をいずれ復活させるかもしれない。これが成功すれば、ユーロ圏の貨幣主権と金融安定に影響を与えかねない」と警告した。
その上で、「欧州の戦略的自治を守るためデジタルユーロの実現を急務とする」ECBの立場をESMは支持していると表明。「デジタルユーロは今日、かつてないほど必要とされている」と語った。
原題:US Crypto Push Threatens EU’s Strategic Autonomy, ESM Chief Says(抜粋)
--取材協力:Piotr Skolimowski、Max Ramsay.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.