世界屈指の大口投資家にとって、2025年は途方もない富か損失を生み出す可能性のある年となりそうだ。

複数の戦争が、和平に向かうかエスカレートするかの瀬戸際にある。米中関係は悪化の一途で世界的な関税の動きもある。こうした中でブルームバーグ・ニュースは、総額2兆ドル(約295兆円)を運用する機関投資家のトップらに向こう1年間の投資プランを尋ねた。

GIC(運用資産は推定8800億ドル)

シンガポールの政府系ファンド(SWF)、GICの最高投資責任者(CIO)を退任するジェフリー・ジェンスバキ氏は、資本が不足している市場の一部を有望視している。

「残念ながら今年は、相場が回復し誰もがより楽観的になる中で、多くの人が投資しようとしている分野ではリターンが圧縮されつつある」と指摘した上で、利益を得られる可能性がまだある分野としては、評価額低下で参入を望む買い手が減少した欧州不動産だとの考えを示した。

GICの林昭傑(リム・チョウキアト)最高経営責任者(CEO)は、興味深い投資テーマがいくつかあると述べ、特にインフラに言及。エネルギー関連のインフラを主な対象として挙げ、「インフラは今後12カ月間、引き続き投資対象となる」と述べた。

華夏基金管理(3560億ドル)

トランプ米大統領の貿易戦争が中国の経済成長と市場にさらに打撃を与えると多くの投資家が懸念する中で、中国2位の投資信託会社、華夏基金管理のグローバル資本投資担当CIOのリチャード・パン氏は投資チャンスを見いだしている。

パン氏によると、トランプ政権1期目の関税では中国の貿易黒字はほとんど減らず、米国の半導体規制は中国国内産業の強化に寄与した。

投資家はトランプ大統領の「米国第一」主義を踏まえて米国株に強気だがバリュエーション(株価評価)は高い。一方で中国の資産は歴史的低水準に近く、債券利回りの低さを考えると「非常に注目に値する投資価値」を生み出しているという。

人工知能(AI)スタートアップ、DeepSeek(ディープシーク)など国内テクノロジー企業の台頭は、中国がローエンドの製造業から自国発のイノベーション(技術革新)へとシフトしていることを示しているとパン氏は説明。

中国政府が予想以上の対策を講じ、地方政府が債務負担を吸収してより多くの売れ残り住宅を購入できるようにすれば、不動産市場の低迷に歯止めがかかり、株式市場が活性化し、消費者の信頼感が回復する可能性があると述べた。

こうした潜在的トレンドから利益を得るため、パン氏は銀行のような高配当銘柄に注目。国際競争力のある国内のバッテリーと家電業界のリーダー企業も選好しているという。

パートナーズ・グループ(1520億ドル)

スイスのオルタナティブ資産運用会社パートナーズ・グループは一部のライバルとは異なり、中国に対して完全に冷めた見方をしているわけではない。

ステフェン・マイスター会長によると、今後1年間に中国で最も現実的な投資対象となるのは、国内市場に焦点を当てた分野で、国内向け医薬品の受託製造業などだという。

同社は多くのグローバル投資家と同様に、データセンターなどの分野に多額の資金を投入してきたが、現在はデータブームの恩恵を受けられる事業を一段と深く調べている。

電力網設備の検査を行う企業や、より高速なデータ転送を可能にする画像処理半導体(GPU)コネクターのような機器のメーカーなどが含まれ得るという。これは膨大な処理能力をAI学習に使う開発者には重要な関心分野だ。

ピクテ・ウェルス・マネジメント(3150億ドル)

スイスの資産運用会社ピクテ・ウェルス・マネジメントのセサル・ルイスCIOは、今年は落とし穴とチャンスの両方が待ち受けていると見ており、「すごろくゲームの年」と名付けた。慎重な運用と順序付け(投資タイミング)が大きな違いを生むという。

多くのエコノミストは、トランプ政権による関税賦課がインフレの大惨事を引き起こすと懸念しているが、ルイス氏は市場が成長すると確信。前半は米国の例外主義が強く残り、米国株は投資家が確かな利益を記録できるほど伸びると考えている。

ルイス氏は、米国の中規模金融機関の大掛かりな統合を予想。トランプ大統領の規制緩和で新規株式公開(IPO)と並行して企業の合併・買収(M&A)が急増すると見込まれ、投資銀行や買収対象企業には大きなチャンスが訪れると語った。

さらに、「今年はオルタナティブ投資が好調な年になる。プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資は2年間あまり順調でなかったが、400件のIPO案件を抱える大手投資銀行もいる」と明らかにし、「このため、最近ではPEに再投資し、少しリスクを取ることに満足している」とコメントした。

それでも、ルイス氏は上昇局面でも下降局面でもサプライズに備えている。

ウクライナでの戦争が今年中に何らかの形で終結し、ドイツで大連立政権が実現して予算を巡る対立が収まり、ドイツの消費者が貯蓄をより安心して使い始めるようになれば、欧州株に対する自身の見方はネガティブからポジティブに転換すると想定。金にも強気だとし、「われわれにとって長い1年になりそうだ」と話した。

(原文は「ブルームバーグ・マーケッツ」誌に掲載)

原題:Investors With $2 Trillion Lay Out Strategies for Turbulent 2025(抜粋)

--取材協力:David Ramli、Dingmin Zhang、Amy Bainbridge.

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