シリアのアハマド・シャラア暫定大統領は、暫定政権側の治安部隊とアサド前政権支持者の間で発生し、ここ数日で死者が1000人超に達している武力衝突について調査する委員会を設置した。国際社会からは衝突を非難する声が出ている。

シリアでは6日、アサド前政権と関係があるとされる武装集団が同国の地中海沿岸都市にある複数の治安施設や政府施設などを攻撃。昨年12月のアサド政権崩壊以降で最悪の襲撃事件となった。

シャラア氏は9日の演説で、「宗派間の争いをあおろうとする者との対立には強くあらねばならない」と強調。「民間人の流血に関わった者が誰であろうと厳しく責任を問う」と述べた。

新政権は、国際社会の承認を獲得して制裁の解除につなげることを期待しているが、今回の武力衝突でそうした取り組みが覆される可能性がある。シリアでは14年近く内戦が続き、10年間におよぶ制裁が経済を疲弊させた。

国営シリア・アラブ通信(SANA)が大統領府の声明を引用して報じたところによると、設置される委員会は民間人に対する侵害行為の調査のほか、犯人の特定と裁判所への送致、国家機関および治安部隊に対する攻撃の調査などを行う。

シリア人権監視団(SOHR)によると、死者数は3日間で1311人に達し、そのうち830人は少数派であるイスラム教アラウィ派の民間人という。現政権の治安部隊は、武装集団に報復する際にアサド前大統領出身宗派の同派を標的にしていると非難されている。

ターク国連人権高等弁務官は声明で、「身元不明の犯人や暫定政権の治安部隊メンバー、前政権と関係のある一派が宗派に基づいて即決の処刑を行っているという報告がある」と指摘。

「暫定政権が法を尊重する意向を表明したことに続き、シリア人を保護するための迅速な行動が取られなければならない。これには違反や虐待を防ぎ、これらが起こった場合には責任追及を行うために必要なあらゆる措置を講じることが含まれる」とした。

ルビオ米国務長官は声明で、米国はアラウィ派を含め「シリアの宗教的および民族的少数派を支持する」と表明。「シリア暫定政権は同国の少数派コミュニティーに対するこれらの虐殺の加害者に責任を負わせなければならない」と述べた。

ラミー英外相も同調し、「恐ろしい」武力衝突を非難した。

原題:Syria to Investigate Violence That Killed Hundreds of Civilians(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.