「海の甲子園」とも呼ばれる大型の手こぎボートの全国大会に山口県長門市の大津緑洋高校カッター部が出場します。厳しい練習に挑む海の男たちを取材しました。

地区予選優勝、今年も全国の舞台へ

立ち上がるようにしてオールをこぎます。大津緑洋高校・カッター部の22人。学校の目の前、仙崎湾が練習場所です。6月18日、鳥取県境港市で開かれた地区予選で、6チームでの戦いのなかみごとに優勝し全国大会の切符を手にしました。コロナの影響で大会が中止になった年もありましたが、去年に続いての全国大会です。

大津緑洋高校カッター部・小林龍胆キャプテン

「今年は3年生と2年生でチームが組めて去年全国大会を経験した人もたくさんいるので、その経験を生かしてしっかりこいでいきたいです」

「スタート」と「折り返し」が勝負のポイント

レースは全長9メートルの手こぎのボートに14人が乗り込み、往復1000メートルの距離でタイムを競います。勝負のポイントとなるのは「スタート」と「折り返し」です。スタートではブイに向けて、ボートをまっすぐに保つ技術が求められます。「艇指揮」と呼ばれる選手のかけ声で、タイミングを合わせます。風や波の状況でこぎ方も変わってきます。

艇指揮・大島俊平選手(2年)

「僕が心がけていることはピッチを一定にすることです。ピッチが乱れてしまうとみんなのこぎがバラバラになってしまうので、一定に保つことを心がけています」

折り返しの「回頭」で勝負をかける

オールをこぐ選手の手のひらはマメだらけです。練習の厳しさを物語っています。ブイを回る「回頭」という折り返しの練習も繰り返します。スピードに乗せて大きく回るか、スピードを緩めて小さく回るかはそれぞれのチームの判断です。大津緑洋は、ブイぎりぎりを攻めて小さく回ります。ブイにボートやオールが当たると、失格になります。それでもリスクを恐れず、スピードを保って小さく回る作戦で勝負をかけます。

去年の全国大会では、オールがブイに当たったと判断された、苦い経験があります。折り返しの回頭は、かじを取る「艇長」という選手が重要な鍵となります。なるべく小さく回るため、ブイぎりぎりにかじを取ることを求められます。ボートの上では厳しいことばも飛び交います。

「いつになったら仕上げるん回頭、イメージしとるんかちゃんと」

「ぎりぎりまで近づいていい、俺ら上げるから、いつでも意識しろ授業中も」

それでもチームワークは揺らぎません。練習に練習を重ねて去年の雪辱を果たします。

艇長・宮島充生選手(3年)

「艇長の1番の見せ場である回頭を最速でして、最高のパフォーマンスができて、全国1位を目指します」

練習前の腹ごしらえ、地元企業も応援

男子高校生とあって、練習の前には監督の作ったパスタで腹ごしらえです。スタミナを付けるためで毎日の日課だそうです。この日、地元の企業からちくわやかまぼこが提供されました。低カロリーで、タンパク質が豊富な魚の練り製品は、「フィッシュプロテイン」と呼ばれ、選手たちに丈夫な体を作って欲しいという思いがあります。

選手「ありがとうございます、これが僕たち全国優勝するための鍵になります」
選手「フィッシュプロテインを取りまくって力付けまーす」

勝利目指し雨対策も万全に

この日は時折、雨の降る天気です。雨への対策もしっかりやっていきます。

中川大地選手(3年)

「やっぱめちゃくちゃ手とか足とか滑るんで、みんな対策にテーピング巻いたりとかしてこいでますね。今こいどけば慣れるんで、それが勝利の秘訣ですね」

全国大会には14チームが参加し、上位3チームが決勝に進みます。海にロマンを求める選手たちの熱い戦いは7月22日と23日に福岡県で行われます。

小林キャプテン

「ふだん応援している皆様やお世話になっている方々に、悔いのない結果を見せられたらいいなと思います。僕自身は最後まで絶対にあきらめることなく、力いっぱいこぎたいと思っています」

選手全員「海とカッターに礼、よろしくお願いします」