(前編を読む)
病を克服し、念願の潜水士の道へまい進する徳山海上保安部・小野颯太さん。潜水研修前の訓練では大きな壁にぶちあたりました。舞台を潜水士になるための研修が行われる海上保安大学校に移し、日々訓練に励んでいます。その様子を密着しました。

徳山海上保安部・小野颯太さん:
「自分も病気が治ったら、こうやって人を助ける仕事をしたいなと」


人を助ける仕事がしたい!
幼い頃の入院生活で「海猿」に出会い、憧れた少年は、病を克服し、念願の海上保安官に。そして夢の潜水士への階段をのぼりはじめました。

研修前の特別訓練は苦難の連続。

先輩潜水士・冨田隆さん:
「あとはけがないように、無事研修を終えて、たくましくなって帰ってきてもらえればと思っております」

海上保安大学校での訓練はさらに大きな壁が・・・仲間との絆で乗り越えられるのか?

潜水研修が行われているのは、広島県呉市の海上保安大学校。海上保安庁の幹部職員の教育機関、また語学などの研修を行っています。潜水研修は、海難救助のスペシャリスト・海上保安庁の潜水士を育成します。今までに約1400人の潜水士を輩出しました。

小野颯太さん(21)。徳山海上保安部の巡視船くろかみの乗組員です。
潜水教官の馬場遼平さんは、元くろかみの潜水士。3月まで小野さんとともに、くろかみに乗船していました。潜水研修は年2回行われ、小野さんは8月からの後期組です。18人が潜水士を目指し、訓練に励んでいます。1か月のプール実習をクリアすると、海での訓練で実践を学びます。初めの1か月間、座学で機材の扱い方や安全を学びます。

午後からはプール実習。海上保安庁の潜水士としての基本の“基”を体に叩き込みます。安全管理や水中での動き方など、きっちり体で学びます。指導するのは、潜水教官のほか、現役の潜水士たちです。

潜水教官・恰和広 教官:
「プール実習第10回、訓練内容説明する・・・」

プール実習の課題をクリアしなければ、海の実習には参加できません。

最大で2分30秒、呼吸を止めなければなりません。呼吸停止はできるだけリラックスした状態で行います。余計なことを考えると、脳が酸素を使い、苦しくなるそうです。

錘運搬(すいうんぱん)は、要救助者や資機材を運ぶために脚力を鍛える訓練。最大10キロの重りをお腹にのせて、100メートル泳ぎます。仲間の掛け声で方向を修正しながら進みます。ウエットスーツは歴代の先輩が袖を通してきたもの。努力のあとがうかがえます。

研修中の小野さんのバディは第5管区の師岡寛也さん(23) 。

ギア交換は、水深3メートルのところで、お互いに資機材を交換します。水中での落ち着きが試されます。二人で一つのボンベを共有するバディブリージングは、
バディ間の高い連携と安全管理が必要です。

馬場教官:
残圧何回確認したん?浮上中?2人で上がってくるのに、2人で1つのボンベ使ってるのに、残圧の確認少なすぎるでしょ。レギュレーターくわえてなくて相手に渡してるときに息はかなかったら、自分の肺破裂するんじゃない?何やってるん?」

水中では、ちょっとした気のゆるみが命にかかわるほどの事故を引き起こすかもしれません。危険と隣り合わせなんです。

小野さん:
「ちょっといっぱいいっぱい。落ち着けてないというのを、あと細かい安全点検とかいろいろあるんですけど、2人になったとたん、1つ1つの動作がちょっと適当になっていました」

水深3mで行うのは水平インターバル。顔をつけたまま、リラックスしながら換気します。

肺に新鮮な酸素が取り入れられ、呼吸停止時間を延ばすことができます。

小野さんの隣のバディ、師岡さんの様子に異変が・・・

うまく換気が出来ず、酸欠状態に。