2019年、山口県宇部市の消防署に勤務していた男性消防署員(当時27)が、パワハラなどを訴える遺書を残し自殺しました。男性が自殺したのはパワハラが原因として遺族が消防組合を相手取り、損害賠償を求めた裁判で、山口地裁(秋信治也裁判長)は13日、遺族側の主張を退け、消防組合に約200万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。

訴えによりますと2019年1月、宇部中央消防署に勤務していた男性(当時27)が、職場でのパワハラやトラブルを告発する遺書を残し、自殺しました。

宇部中央消防署では、先輩職員による多額の金銭の借り入れや、職員の財布から現金が抜き取られるなどの窃盗、職員から預かった金を私的に使うといった不適切な会計処理などが行われていたといいます。また、副署長が部下に対して書類を投げつけるように返却したり、あいさつを無視したりと、パワハラ行為や犯罪行為がまん延していたとしています。

遺族は、男性の自殺は職員によるパワハラや犯罪行為を黙認し、適切な処理を行わない消防組合幹部らの対応に大きな絶望を感じたことが原因だと主張。宇部・山陽小野田消防組合に対し、1億800万円の損害賠償を求める訴えを起こしていました。

判決で山口地裁は、男性は自殺前に何らかの精神障害を発病していたと認定。上司らのパワハラ行為と自殺との関係について、上司らの違法な行為により通常発病するとは言えず、自殺との因果関係は認められないと、遺族側の主張を退けました。その上で、男性が死亡する前まで消防側の違法行為は行われていて、男性が受けた精神的苦痛は小さいと言えないとし、あわせて200万円の支払いを命じました。

判決後、遺族は会見を開き、控訴する方針を明らかにしました。

宇部・山陽小野田消防組合は「判決内容を確認し、代理人弁護士に相談の上、対応を決定することにしている」とコメントしています。