旧統一教会と富山政界を検証するシリーズ第2弾。28日閉会した県議会では新田知事と旧統一教会の関係を問う質問が与野党から相次ぎました。知事選で旧統一教会はどのように支援をしたのか。新田知事を応援した関連団体の幹部を直撃しました。
新田知事(2019年12月11日 出馬会見):
「富山県知事選挙に立候補することをここに決断しました」

保守分裂選挙が確実となったおととしの富山県知事選。この年の6月、自民党県連が現職の石井氏を推薦候補に決めたあと、旧統一教会が新田氏の応援をすることにしたと言います。
世界平和連合富山県本部 事務局長 鴨野守氏:
「2年前、すでに石井知事は74歳というご高齢で、知事という激務を肉体的または精神的に耐えられるかどうか。そして今のこのIT時代と言われる中にあって、富山県を正しくリードができるのかどうか。新田候補を私たちとしては応援させていただこうと。こちら側がお声がけをさせていただいた」

旧統一教会の元広報局長で、関連の政治団体・世界平和連合県本部の事務局長、鴨野守氏。世論調査で石井氏のリードが報じられる中、鴨野氏が選挙応援として最初に行ったのが、後援会の名簿集めだったと言います。
鴨野氏:
「新田候補は経済出身。政治とはある意味無縁で生活してこられた方ですので、政治家にとって大変大事なのはご存知のように後援会の組織、また後援会の名簿でございます。例えば私でしたら自分の家族、親戚の声かけできる人に名前を書いてもらう。または近所の方々に新田候補、こんな人柄の方なんですけど、後援会に名前入れさせていただけてませんかということで名簿集めをやりました」

毛田キャスター:
「それは戸別訪問ということですか」
鴨野氏:
「そうですね」
知名度で石井氏より劣る新田氏。戸別訪問では、こんなテクニックも伝授したと言います。
鴨野氏:
「戸別訪問する時に首から吊り下げるワッペン。例えば鴨野の顔写真つけて鴨野守、新田八朗後援会、そして顔写真をつける。そして電話番号を入れる。こういうのを新田さんの事務所で作ってくださいって言って『わかりました』って言って全然出てこなくて。すいません、こっちで作りますって言ってこっちで作って、事務所にいる人たち全員にそれを作りました」
名簿集めをした人数については「ノーコメント」としました。
新田知事:
「新人、挑戦する立場なので1つ1つ積み重ねて広げていくしかない」
8月1日、新田氏は選挙事務所で旧統一教会、世界平和統一家庭連合の当時の会長、徳野英治氏と面談していました。どんな意味があったのでしょうか。
毛田キャスター:
「家庭連合のトップが自治体のトップや議員と会うことはあるのか。鴨野さんの知る限りで教えてください」
鴨野氏:
「ないと思いますよ」
その一方。
鴨野氏:
「教団の会長が何かこう意図的と言いましょうか、積極的にアプローチをしたのではないかと思っておられるかもしれませんが、それは全くの思い込みですね」
徳野会長は富山大学出身で、たまたま富山に来る際に会っただけだと主張しました。
新田氏は8月12日には世界平和連合の名古屋支部長とも面談していました。
鴨野氏:
「あれは選挙においての分析と言いましょうか。平和連合の方で何か情勢分析をしながら、何かわれわれにできること。やったらいいことについて意見交換をしたんだろうと」
私たちの取材で「戸別訪問の際に名古屋から新田さんを応援に来ましたと言われた」「総決起大会の時に名古屋ナンバーのバスが複数台止まっていた」との証言が得られました。
毛田キャスター:
「県外から応援を裏づける証言があった。県外から応援が入ったことはございますか」
鴨野氏:
「それについてはちょっと回答は控えたいですね」
毛田キャスター:
「控えたい理由だけ伺えれば」
鴨野氏:
「うーん・・・そうですね。まあ相手のあることですので。これはお答えは控えたい」
250回も集会で演説したという新田氏。滑川市と富山市で合わせて3回、信者らを前に演説したと言います。
総決起大会「ワンチーム!富山!」
10月4日の世論調査でついに、石井氏を逆転しました。

鴨野氏:
「その報道を見て、新田さんの陣営で横一線と、さらにリードへということで確かチラシを作って、選挙事務所が非常に沸いた」
ついに初当選を果たした新田氏。その会場には鴨野氏の姿が。


毛田キャスター:
「実際に会場で勝利を目の当たりにした。その時の思い」
鴨野氏:
「瞬殺。NHKの大河ドラマのタイトルが出る午後8時にパーンと『新田候補当選確実』。あれ瞬殺っていうんですけど」

実は鴨野氏、去年4月の富山市長選にその姿が。さらに、去年7月の高岡市長選では角田候補とグータッチする姿も。


鴨野氏:
「私は新田候補、藤井候補、角田候補、3連チャン。目撃した者として感無量でしたね」

県知事、市長の選挙に関わった鴨野氏。しかし、今年7月8日、安倍元総理銃撃事件が起きると。
毛田キャスター:
「銃撃事件の後、知事と連絡は取り合いましたか」
鴨野氏:
「ノーコメントでお願いします」
定例会見で、旧統一教会との関係を問われた新田知事は、コンプライアンス上、問題がある団体とは付き合わないとする一方。
新田知事(8月25日):
「私が今の立場で宗教法人である旧統一教会さん。世界平和統一家庭連合について私の立場でものを言うとこれは政教分離の原則に反してしまいますので、あくまで世俗的な部分ですよね。商法がどうというのは。そこにおいてのコンプライアンスの問題がなくなれば、しっかりと改善されれば今、国も法務大臣も出られて、関係省庁総がかりでそれを明らかにしようと。消費者庁としても取り組もうと言っておられるんですから、その結果を見る」
鴨野氏:
「知事はある時期までは、過度に政治家が宗教の領域に立ち入ってはいけないと。そういうスタンスを守っておられた。国が教団をめぐる被害の実態を確定するならば、それを踏まえて然るべき決断をしなければいけないと。それがない時点で、メディアから関係を切れと、明言しなさいと言われたからと言って一方的にそういうことはできないというご発言は、ある面当然であり、またある面ありがたくも思っておりました」
しかし、9月12日の県議会で。
新田知事(9月12日県議会):
「旧統一教会はこれまでも元信者などから訴訟が提起され、損害賠償請求が認められた事例が複数あり、コンプライアンス上の問題がある団体だと認識しております。政治家として今後、コンプライアンス上の問題がある団体とその関連団体とは関係を持たないことを明確に申し上げます」
鴨野氏:
「想像されますのは、9月の初めから議会の間は何日間あったんでしょうか。10日あまり、2週間ぐらいあったんでしょうか。その間に、新たな情報であるとか、何か発言を、変更せざるをえない。そういった諸般の事情があったのか。それは私はわかりません。ですからそれは、知事に聞いていただくしかないのではないかと思います」
県議会が始まる前の9月6日、全国霊感商法対策弁護士連絡会から新田知事へ旧統一教会との関係断絶を求める申し入れがありましたが、影響はあったのでしょうか。
毛田キャスター:
「平和連合として県知事を応援してきた鴨野さんとしての受け止めは」
鴨野氏:
「はぁ~そうですね。知事だけではなくて、私たちが選挙の時に自民党が推薦をしなかった知事とか、ほかの市長でも自民党が推薦しなかった市長候補、そうした先生方を応援してまいりました。そういう先生方から関係を切ると言われて。まあ私は、失恋と失業と一緒に味わっているような非常に残念な気持ちであります」

鴨野氏:
「そもそも、この騒動のきっかけをつくったのはマスメディアであります。メディアからは・・・」
毛田キャスター:
「ちょっと、これ原因つくったのはメディアじゃないと思いますよ。これは高額な献金や霊感商法を行ってきた被害者がいるからこういう銃撃事件が起きて、スポットが当たったのであって。メディアがこれをつくり出したわけではないですよ」

鴨野氏:
「それは、それはあなたの立場からはそう見える。それはそれであなたの目からの事実でありましょう。でも、私たちから見るならば違った光景に見える」
最後に、新田知事の選挙に携わった思いを聞きました。
世界平和連合富山県本部 事務局長 鴨野守氏:
「あの夏の日にあの炎天下の中であんなにやったのにという気持ちがないと言ったら嘘になります。ただ、私たちはわずかなサポートではあったけども新田知事誕生に貢献させていただいた誇りを持っている」