福島県いわき市の南端、JR常磐線「植田駅」周辺エリアが注目を集めています。今年8月に小名浜道路が開通し、アクセスが格段に向上した植田エリアには、日中の専門店から夜の飲食店まで130店舗以上が軒を連ね、地元の高校生から大人まで多くの人が集まる活気あるエリアとなっています。

今回は、地元民も愛する植田駅周辺の魅力的なスポットを紹介します。

上質なコーヒーとクレープを味わう駅前カフェ

植田駅を降りてすぐのところに、コーヒー愛好家たちの聖地「bo-shi coffee」があります。2016年にオープンしたこの専門店は、コーヒー界のミシュランで1つ星に選ばれた実力派焙煎士、坪井さんが経営しています。

「基本的に甘いコーヒーが好きなので、甘みのあるコーヒーで、そこにフルーツのような酸がどんな風に絡んでくるのかを見ながら豆を選んでいます」と坪井さん。世界各国から厳選された豆は、店内でドリップバッグや飲料として提供されるだけでなく、店外の自動販売機で24時間いつでも購入することができます。

特におすすめは「ナイトロコーヒー」。窒素を含ませることで口当たりがまろやかになり、いつもと違うコーヒー体験ができます。コーヒー豆を使ったオリジナルアイスクリームも見逃せない一品です。

同じく駅前に位置する「CRAFT cafe」は、トレーラーハウスを改装した個性的なクレープ専門店。2025年1月にオープンしたばかりですが、すでに地元で人気を博しています。

甘い系から惣菜系までそれぞれ10種類以上のクレープが揃い、なかでも生チョコレートとイチゴを組み合わせた「生チョコ」(730円)は特に人気です。変わり種の「ガーリックバタークレープ」は、クレープとは思えないパリパリ食感とガーリックの香ばしさが特徴で、おつまみ感覚で楽しめる一品です。

「セレクトクレープ」では、好きな具材を自分で選んでカスタマイズすることもでき、老若男女問わず多くのお客さんが手にしたクレープを片手に商店街を歩く光景が見られます。

スニーカー再生の革命!地元発の「アディショナルソール」

植田駅から徒歩圏内、街のメガネ屋さんで意外な出会いがあります。半世紀以上続くメガネ店では、世界のブランドメガネを取り扱うだけでなく、オーナーの島村さんの小学校時代からの同級生である木田さんの革新的な靴の展示も行っています。

「アディショナルソール」と名付けられたこのサービスは、使い古したスニーカーのソールを剥がし、革靴の製法でリペアするという画期的なアイデア。

「革靴自体の需要が落ちてきて、何かないかなと思った時に、劣化してボロボロになっちゃって、上はいけてるっていう状態のものがいっぱいあると思うんですけど、それを剥がして、いろんなソールをつけることができるようになった」と木田さん。

もともと革靴の生産で国内外のブランドと仕事をしてきた木田さんが2017年から始めたこのサービスは、使い捨てられがちなスニーカーに新たな命を吹き込む環境にも優しい取り組みとして注目を集めています。交換できるソールは12種類あり、オリジナルソールも開発。お気に入りのスニーカーを長年履き続けることができます。

「アディショナルソール」は業界でも話題となり、海外での展示会やファッション雑誌でも取り上げられるなど、植田町から世界へ発信する革新的なサービスとなっています。

高校生の青春の味!地元愛されパン屋「キムラヤ」

植田の若者文化を支える存在として、来年で創業60年を迎える「キムラヤ」があります。勿来工業高校や磐城農業高校など地元の高校購買部でパンを販売し、「青春の味」として卒業生からも愛され続けているパン屋さんです。

現在は佐藤さん親子が切り盛りし、84歳になる母・ひろこさんが今でも高校に直接パンを届けています。

高校生に人気のポテトサラダパンは、磐城農業高校の卒業生が育てたじゃがいもを使用。「卒業生のお兄ちゃんが畑でじゃがいも植えてくれるんです。新鮮なもの使えるから」と佐藤さん。毎朝ふかして手作業で潰したじゃがいもは、ゴツゴツとした食感が特徴です。

創業以来60年間作り続けている「アンバター」も人気商品。ぐるぐる渦巻き状に挟んだあんこと塩気のあるマーガリンが絶妙なバランスで、「端から端までアンコを堪能できる」と高校生たちに愛されています。

店内には8年前に亡くなった先代の豊さんの写真が飾られており、「手を合わせて泣きながら帰るお客さんもいる」といいます。「卒業生にとっては高校の時に食べた青春の味。それを変えないでくれと言われているので、味が変わったら言ってください」と親子で伝統を守り続けています。

歴史と伝統が息づく熊野神社の四ツ沖伝学御神楽

植田駅から車で約5分、錦町にある熊野神社は1200年以上の歴史を持ち、全長約200メートルの参道が特徴的な由緒ある神社です。

ここで毎年7月に行われる「稚児田楽・風流」は国の重要無形民俗文化財に指定されています。このお祭りの最大の特徴は、地域の小学1年生から6年生までの子どもたちが「ピンザサラ」という楽器を持って舞うこと。子どもだけで伝承される神楽は全国的にも珍しく、福島県内では唯一このお祭りだけに残っています。

さらに、天皇の使いである「勅使」は7歳未満の男の子が務め、祭りの2日間は地面に足をつけないよう神社まで運ばれます。役目を終えた勅使が神前で居眠りすると、それを見た人々は「神が宿った」と静かに手を合わせるという伝統が今も続いています。

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植田駅周辺エリアは、コーヒー、クレープ、パン、そして夜は活法や居酒屋など、食の楽しみが豊富なエリアです。さらに、スニーカー再生という革新的なサービスや、1200年の歴史を誇る神社の伝統行事など、多彩な魅力に溢れています。

小名浜道路の開通で訪れやすくなった今、ぜひ植田エリアの隠れた名店や文化に触れてみてはいかがでしょうか。

『ふくしまSHOW』
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