福島県内の農家の平均年齢は61.5歳で、65歳以上の高齢者の割合は50.5%と半数を占め、全国の他の自治体と同じように、高齢化が課題となっています。
まさにいま、若い力が必要とされている中、原発事故で一度離れた故郷に戻り、農業を始めた二十歳の農家を取材しました。
塚田晴さん(20)は二本松市で農業事業を行う会社に勤めていて、東京ドームおよそ1.2個分の農場の運営を任されています。

塚田さんの農場には、他にはない特徴があります。それは畑の上に設置されたソーラーパネルです。これは農業と太陽光発電を組み合わせたソーラーシェアリングと呼ばれるもので、持続可能な地域作りの仕組みとして注目されています。

二本松市出身の塚田さんは原発事故後に一度兵庫に避難しましたが、昨年故郷に戻ってきました。農業を始めたきっかけは避難後も続いてきた地元の農家との交流でした。塚田さんは市内で農業を営む大内信一さん(81)のもとで幼い頃から農業に親しんできました。

塚田さん「幼少期は田植え体験や収穫祭に参加させてもらっていて、大内さんが貸していた市民農園で家庭菜園をいていた。そういう原体験が農業をやりたいって思うようになったのには繋っている」
記者「小さいころの塚田さんを覚えてますか?」
大内さん「よく覚えている。カブトムシが大好きで幼虫をいっぱいとってあげたのも覚えている。田植えにきてお父さんにおんぶされながら田植えをしたっていうのがみんな驚いたり感心したりした思い出がある」

まさに今、農業に必要とされている「若い力」。大内さんは、塚田さんの存在を心強く感じています。
大内さん「地域の人たちと話しても若い人がいるなら少しでも応援したいという人もいるし元気をもらえるという人もいっぱいいる」
塚田さんが農業を目指すきっかけになった大内さん。大内さんが先輩農家として伝えたいのは「農業の楽しさ」です。
記者「農業で食べていくことは難しいですか?」
大内さん「これほど楽しい仕事はない。楽しくやればあとの生活はついてくると私は思う」
塚田さんも、大内さんの姿を見て、その楽しさに魅了されました。
塚田さん「僕もプレッシャーもあるが気負いすぎずに楽しんでやっていくのが一番なのかなと感じた」
避難生活の中で、農業を志したという塚田さんには故郷で実現したい大きな夢がありました。