集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法は憲法9条などに違反するとして、住民が国に損害賠償を求めた裁判です。仙台高裁は5日、「明確に憲法違反とは言えない」などと、全国の同じような裁判では初めて憲法判断に踏み込みました。原告の請求は退けました。

阿部航介記者:
「原告団が仙台高裁に入っていきます。『新安保法制違憲、ふくしま平和訴訟』と書かれた旗を掲げています」

この裁判は、安倍政権時の2015年に成立し集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法は違憲で、平和的に生きる権利などが侵害されたとして福島県いわき市の住民170人が国に1人1万円の損害賠償を求めているものです。

一審の福島地裁いわき支部は去年2月、憲法判断を示すことなく原告の請求を棄却していました。

5日の控訴審判決で、仙台高裁の小林久起裁判長は「安保関連法で集団的自衛権の行使が認められたのは他国への攻撃により日本の存立が脅かされる場合などに限定される」と指摘。そのうえで、「運用が限定的なため、明確に憲法9条などに違反するとまでは言えない」として、憲法判断に踏み込みました。全国22の裁判所や支部で起こされている同じような裁判で憲法判断は初めてです。原告の請求は、棄却しました。

今回の判決について、原告は「政府の行為の追認」と批判しました。

原告側弁護団 広田次男共同代表:
「この判決は完全に政府の行為の追認。裁判所が政府の一機関に成り下がったと言っても過言ではない」

原告は、最高裁判所に上告するかどうか検討することにしています。