地震学の常識を覆す「異常に短い再来間隔」

これまでM9クラスの超巨大地震は数百年から千年程度の間隔で発生すると考えられてきました。カムチャツカ半島沖での73年間隔での巨大地震の再来は、この常識を大きく揺るがしました。筑波大学、京都大学、海上・港湾・航空技術研究所、東北大学の共同研究チームは、この謎を解明するため、最新の地震波解析手法を用いて2025年地震の破壊過程を詳細に調べました。

川を遡上する津波(7月30日宮城・多賀城市)視聴者提供

9〜12mの「大すべり」が示す驚きの真実

筑波大学などが開発した最新の地震波解析法「ポテンシー密度テンソルインバージョン法」を用いた結果、驚くべき事実が明らかになりました。2025年の地震では、震源域南西側の広域で9〜12mという巨大なすべりが発生していたのです。

この数値は大きな意味を持っています。1952年以降の73年間でプレートが沈み込んだ量は約6m分でした。つまり、2025年の地震は、新たに蓄積されたひずみの2倍もの大きさのすべりを起こしていたことになります。

カムチャツカ地震と津波では、猛暑での避難という課題も残した(7月30日仙台・若林区)

さらに興味深いのは、大すべり領域で同じ場所において2度のすべり加速が確認されたことです。この現象は「オーバーシュート(大きすぎる断層すべり)」と呼ばれています。地震で断層がずれるとき、勢いが強すぎて本来止まるべき位置を通り過ぎてしまう現象です。