静岡県牧之原市での竜巻被害から11月5日で2か月、暮らしの再建が進む一方で、子育てをしている母親の中には心細さや不安を抱える人もいます。そんな中、母親と赤ちゃんが安心して過ごせる場所をつくりたいと被災地に助産院を開くことを決意した助産師がいます。

10月28日、牧之原市で開かれたベビーマッサージの教室です。助産師の深澤知美さん。県内の総合病院で約20年働いた後、2022年に助産師として独立し、牧之原市で活動しています。

この日、集まったのは竜巻で被災した母親たちです。

<牧之原市細江に住む母親>
「家のカーテンが揺れるぐらい、ガラスとか割れちゃうんじゃないかと思うくらいの」

2か月前の9月5日、突如襲った竜巻で町の姿は一変しました。牧之原市では住宅の被害に加えて、停電や断水も発生しました。

深澤さんは、竜巻被害の直後から親子のフリースペースを開くなどの支援を続け、心身のケアとともに不安な気持ちに寄り添ってきました。

<助産師 深澤知美さん>
「何かを与えるだけが支援じゃないんだなって。こういう場所を提供することも、ママのリラックスや癒やしにつながっているんだと思った」

深澤さんは被災地で活動を続ける中、特に被害の大きかった牧之原市細江に助産院を開くことを決意しました。

<深澤さん>
「もっともっと近くで、より近くで、より早くサポートしたいなって思ったら、突然、不動産屋に行って契約しちゃった感じ。この物件も、初めて見た時には、ここにも穴が開いているんですけど、大きながれきがこう突き刺さった状態で。もし竜巻がなかったら、今ここでやろうっていう考えにはならなかったんじゃないかと思います」

もともと牧之原市には助産院が1か所もなく、深澤さんも訪問専門の助産師として活動していました。しかし、4人の子どもを育てる母親としての経験をふまえ、災害時には母子が孤立しないよう居場所が必要だと実感しました。

<深澤さん>
「もし私の行動で牧之原の母子の環境が変わるなら、皆さんのためにもなるし、私もより牧之原で子育てを楽しく安心してできるかなっていう思いもあって」

10月下旬、助産院はプレオープンを迎えました。笑顔とつながりの輪が広がるよう「まある助産院」と名づけ、産後ケア事業のほかヨガやベビーマッサージの教室などを開くということです。

<母親>
「産んでからずっと家で2人でいたり、誰とも会話ができない状態で病んでしまったこともあったので」

<母親>
「信頼できるというか、すごいありがたい存在が方がこうやって近くにいてくれるっているのは、本当に安心できるなって、安心して子育てできる」

<深澤さん>
「私と同じように、この2か月でいろいろなことを考えて子育てされてきたママたちだったので、リフレッシュになって、子育てに前向きになれる、何かそういうことをやっていきたい」

「まある助産院」は11月27日に本格オープンの予定です。