近年、注目度が高まっているジビエ。この文化を静岡に広めたいと新たな取り組みがスタートしました。ダイエットや貧血にも効果が期待されるジビエを「オクシズ」から発信しようと若きハンターが奮闘しています。
鍋から上げられたのは、おいしそうなフライ。静岡市葵区の人気の居酒屋「こんちゃん」では、ジビエの代表格=鹿肉を提供しています。
<居酒屋「こんちゃん」近藤晃弘さん>
「この鹿肉は馬刺しよりもクセがない香り。ほとんど焼いても香りはない状態。いま、静岡でシカが害獣として非常に困ってまして、たまたま若いハンターと知り合ったので、鹿肉を持ってきてという話をしたら非常に味がよかった」
人気店の料理人が認めた若きハンターは、静岡市の山間部「オクシズ」で活動しています。
人の気配がない森の中で鹿を呼ぶ笛を吹くのは、ハンターの石本光希さん25歳。
<石本光希さん>
「誰ともかぶらない趣味を持ちたくて。それがたまたま狩猟だった感じですね」
その若さを生かし、シカを山の奥深くまで追いかけて銃でしとめる「忍び猟」というスタイルを追求しています。
シカを見つけると息をひそめて、近寄って来るのを待ちます。
「パーン」
崖のような山の斜面を駆け下りシカを確保します。原則、石本さんがシカを撃つのは1日1頭のみ。野生の命と向き合う日々です。
<石本光希さん>
「引き金を引くときはとにかく無心。見たものを引き金を引くという冷酷な話だが、それでやっている」
静岡県内ではシカによる農作物への被害が長年、問題になっています。自ら獲ったシカをおいしく活用していきたい。石本さんは今シーズンから新たな取り組みを始めました。
ジビエの安全な流通を目指し、石本さんは「ワイルドハント」という会社を立ち上げ、仲間と一緒に解体所を建設しました。猟をする山から近い場所で、保健所の許可を得て食肉加工を始めるためです。
シカの肉は、手早く処理をしないと臭みが出たり、硬くなったりします。おいしい肉をお手頃に届けるには、自ら獲ったシカを素早くさばくための場所が必要だったのです。
<石本光希さん>
「飲食店がジビエを扱いたい人たちが多いが、どうしても単価が高いので扱えないという人たちが多かった。価格をある程度リーズナブルにしたもので、お店で食べてもらえたり、家庭用でも食べられるようにしたいと思っている」
シカの肉は大きなポテンシャルを秘めていると、静岡県立大学の教授は話します。
<静岡県立大学フードマネジメント研究室 市川陽子教授>
「いいたんぱく質ですし、脂質少な目、で鉄が多い。貧血の防止には本当に持ってこい」
鹿肉と牛肉の成分を比べるとシカの方がカロリーは低く、鉄分が多いため、貧血やダイエットに悩む女性、アスリートには持ってこいの食材です。
地域の宝であるシカの肉をオクシズから発信したい。それが「ワイルドハント」の目標です。
<石本光希さん>
「まずはオクシズの活性化、各お店とコラボレーションの形でジビエの理解を深めていく、どんどん広めていくというのが我々のモットーであります」
石本さんは使命感を持って、野山でシカを追い続けます。