「山口さんは方言研究界の中でも恐れられた人」
だが、この山口の仮説には、大きなネックがあると奈良大学の岸江信介教授は指摘する。「言葉は複雑なものから単純なものに変わっていくのが、世界的に見てもセオリー。その点で山口説は、単純なところから複雑な体系への変化を想定しなければならない」。
一方、金田一説は「複雑なアクセント体系が単純なものに変化していく想定で、川上から川下に流れるように自然」(岸江教授)だという。
岸江教授にとって、山口は「出会わなかったらこの道(方言研究)をやっていない。先生のような存在」だ。「山口さんは方言研究界の中でも恐れられた人。金田一さんは誰にも批判されなかったが、山口幸洋という人だけが学説を批判していた」(岸江教授)と振り返る。