S抗体価が低い患者にブレインフォグやQOL低下が多い

解析の結果、血中S抗体価はワクチン接種回数と強く相関することが確認されました。

そして、注目すべき知見として、記憶障害(ブレインフォグ)を訴える患者においてS抗体価が有意に低値であることが示されました。

この関連は、ロジスティック回帰分析により、年齢・性別・BMI・受診までの日数・罹患時の重症度・ワクチン接種の有無とは独立して認められ、さらにEQ-VASスコアで評価した生活の質(QOL)の低下とも相関が確認されました。

「ブレインフォグ」とは、新型コロナウイルス感染後にみられる後遺症の一つで、思考や集中力、記憶力が低下したように感じる状態を指します。

正式な医学用語ではないものの、多くの患者が「霧がかかったよう」「ぼんやりする」などと表現する症状です。客観的な評価が難しいこの症状に、血中抗体値という指標が関連しているという今回の知見は、診療現場にとって大きな意味を持ちます。

※図1・図2の箱ひげ図の説明
箱ひげ図は、データのばらつきや特徴を一目で示すグラフです。中央の「箱」は数値の真ん中50%が入る範囲で、多くの人やケースが集まる「ふつうの範囲」を表します。箱の中の線は中央値、ひげ(縦の線)は全体の広がりを示し、外れた点は特異な値を意味します。さらに「×」は平均値を示し、中央値との違いからデータの偏りも読み取ることができます。