キンモクセイはほぼ「雄株」だった

大野竜徳さん
「ところで、私たちが見ているキンモクセイはほぼすべて雄株です。日本で見られる園芸品種は、ほぼすべて雄株由来で、雌株が存在しない(雌は極めて稀)とされています。

そのため、花は咲いても実(果実や種)はつきません。庭木のキンモクセイに実がないのはこのためです。近縁のギンモクセイには雌雄があり、果実をつけるのですが」

「日本のキンモクセイは接ぎ木で増やされるクローン個体群であり、ヒガンバナやソメイヨシノと同様、遺伝的にはほぼ同一です。

このような遺伝的均一性を持つ植物ですので、ヒガンバナと同様各地でほぼ同時に開花するのは当然のことですが近年では地域ごとに開花期のずれや二度咲きが観察されるようになっています。

これは、温暖化による気温の乱高下が、花芽の形成や開花制御に影響している証拠のひとつともいえるかもしれません。

キンモクセイの香りが漂う季節が、年々少しずつ変わってきて、2度も咲くというのは、単なる季節感のずれではなく、植物たちが気候変動というストレスにどう適応するかの現れなのかもしれません」