雨が少なかったことも影響か

ーさらに今年の梅雨はとても短く、雨が少なかったですね。

「短時間の局地的大雨はあったものの、地中深くまで水分が届きにくかったのかもしれません。

セミは樹木の根から樹液を吸って成長しています。

乾燥した日が続いて樹木の元気がなくなるとセミの幼虫は羽化前の最後のエネルギーになるエサと水をおなか一杯吸うことができません。

 さらに、セミの幼虫は、雨で土が柔らかくなると地上に出やすくなります。

 これも『羽化するぞ!』スイッチの一つなので、まとまった雨がないと、幼虫たちも戸惑ってタイミングを逃してしまうことがあります」

涼しい地域では?

ーでは、都市部より涼しい山間部ではどうでしょうか。

「もともと山間部では、羽化時期が都市部より1~2週間遅れてやってきます。

 さらに、今年は平年より1~2℃低い日が多かったため、セミの大合唱が聞こえるのはこれからかもしれません。

 ここまで、今年の空梅雨と急激な暑さが影響しているというお話をしましたが、そもそもセミの幼虫は4~6年という長い年月を地中で過ごしています」

「街路樹や公園、庭木の下で、幼虫たちは木の根から樹液を吸い続け、何度も季節を越えて成長を続けます。そして地温が十分に上がった年、ようやく地上に出てくるのです。

 つまり、今鳴くはずのクマゼミやアブラゼミは、2019~2021年頃に孵化した世代だと考えられます。

 今年の気温や天気だけでなく、幼虫期の天候や土壌環境、生存率など、何年も前からの条件が大きく影響しているのです」