反対とは言いませんが農家の心情も理解して欲しい

古庄さんによりますと、多くの畜産農家はエサ代のコストを抑えるため、自身の農地と借りた土地で飼料を自ら作る「自給飼料」を進めています。

そのような中、ウクライナ問題などで輸入飼料は高騰、自給飼料が減少することは酪農家にとって死活問題とし、酪農家が減れば一般消費者にも影響が出ると指摘します。

古庄農場 古庄寿治 会長「このままでしたら今年の夏から牛乳が足りなくなります」

大津町など4つの市と町で構成されるJA菊池は、2022年度の生乳生産量が約8万6000トンと、西日本一の生産量を誇っています。

JA菊池 三角修 代表理事組合長「TSMCと一緒になって共存・共栄をするべきだと考えは持っております。ただ、その中で譲れないのは農地」

そう訴えるのは、JA菊池の三角(みすみ)組合長です。周囲の農家から農地の売却・返却についての話をよく耳にするといいます。

JA菊池 三角修 代表理事組合長「TSMC関係で工場を建てるから土地を返してくれと言わると、借りていた農家からすれば、返さなければいけなくなる」

三角組合長は土地を失った農家に代替地を探して欲しいと熊本県に訴えています。

JA菊池 三角修 代表理事組合長「(TSMCに)反対とは言いません。しかし、農家の心情も理解して欲しい。そのためには早く代わりの土地を探していただくとか。それをしないと農家は無くなっていきますよ」

この問題に県の担当者は…

県農林水産部 農地・担い手支援課 山本剛士課長「虫食い的な、農地が侵されるというのは、営農にも支障がありますので、(進出する企業の)集約・誘導を進めていきたい」

農業振興と企業進出の両立を掲げる熊本県は、希望する農家への農地斡旋のため、近隣の複数の市町村が農地の情報を共有する仕組み作りを検討するとしています。

県農林水産部 農地・担い手支援課 山本剛士課長「農地の斡旋もそうですけど、例えばの話ですけど、耕作放棄地になってまだ再生が可能な土地、そこでも営農してもいいよという話があれば、そういった農地を活用していくという方法もあろうかと思います」

こうして県は対策を検討するとしていますが、古庄さんが牧場を一緒に経営する息子の寿一(としかず)さん(40)は、今の状況では先が見通せないと話します。

古庄農場 古庄寿一 社長「今のこの状況をどうやって乗り越えていくかとか、そういうことを頭で考えている感じで、言い方は悪いけど、いま楽しくない」

古庄さんは「代々受け継いだ農地を息子に引き継ぎたい」と話す一方で、これから変化するであろう地域の将来に不安をにじませます。

古庄農場 古庄寿治 会長「(TSMCの)工場ができて、それに関連する工場が周りにかなりできるということなら、この辺も『安住の地ではないな』とそういう思いはしています」

農業を取り巻く根本的な問題

農地が売られているということは、農地を手放す方もいるということで、それには様々な理由があるようです。

農地が売られる理由の一部として「親から農地を譲り受けたが、今は農業をしていない」、また「後継者がいない」や「農家をやめたい」といった深刻な理由もありました。

このように農業に携わる人自体が減っていることもあるようです。