なぜお寺は「漢詩」、神社は「和歌」?

――おみくじには、漢詩が書かれたものと和歌が書かれたものがありますよね。何か違いはあるのでしょうか?
平野:良い質問ですね。一般的に、お寺のおみくじは漢詩、神社のおみくじは和歌が多いという傾向があります。
――それはなぜですか?
平野:漢詩のおみくじは、もともと中国で生まれた「観音籤(かんのんせん)」がルーツのひとつです。南宋時代の中国のお寺で作られたものが日本に伝わり、江戸時代に大流行しました。中国から伝わったものなので、漢詩で書かれているわけです。
――では、和歌のほうは?
平野:和歌のおみくじは、日本古来の信仰が背景にあります。『古今和歌集』の序文に、「三十一文字の和歌を初めて詠んだのは神様、スサノオノミコトである」とも書かれているんです。
――神様が和歌の創始者!
平野:ええ。そう信じられてきました。そのため、日本では古くから「神様は和歌を詠む」と考えられてきました。平安時代になると、神様が人間とコミュニケーションをとる際に和歌を用いる、という伝承がたくさん生まれます。こうした背景から、神社のおみくじには、神様のお告げとして和歌が用いられるようになったのです。
男に捨てられた和泉式部を、貴船の神が和歌で慰めたという伝承も残っています。












